自動思考とは?頭の中の考えが止まらない理由と改善方法を解説!
「頭の中で同じことをぐるぐる考えてしまう」「どうしてもネガティブな思考から抜け出せない」といった悩みを抱えていませんか?
止まらない考えは、自動思考によって引き起こされるものです。無意識に頭に浮かぶ考えが、気持ちを不安定にする原因となることがあります。
この記事では、自動思考が止まらない理由やその改善方法について詳しく解説します。湧いてくるネガティブな考えに悩んでいる方は、ぜひ参考にしてみてくださいね。
自動思考とは?
自動思考とは、ふとした瞬間頭によぎる考えやイメージのことを指します。
例えば、失敗したときに「やはり自分はダメだ」と落ち込んでしまったり、楽しいことがあったときに「この時間がずっと続いてほしい」と感じたりすることなどです。
このように、意識せずに湧いてくる考えが自動思考です。人が1日に自動思考を巡らせる回数は、6万回にも及ぶとされています。
自動思考は認知の歪みを生むことも
自動思考は、認知の歪みを生む原因にもなります。認知とは、「できごとや物に対する捉え方」のことです。
例えば、親切にしてくれた人に対して「優しい人だな」「うれしいな」と感じることが「認知」です。しかし、自動思考が極端な人や過剰にネガティブな人は、優しさを素直に受け取れず、親切な人に対して「裏があるのでは?」「優しくされたのだから見返りを渡さないと」などの捉え方をすることがあります。
認知の歪みを引き起こすとされている、主な自動思考のパターンを以下に紹介します。
1、白黒思考
物事を極端に良いか悪いかで判断する考え方。
2、べき思考
「〜すべき」「〜しなければならない」と過度に自分や他人にプレッシャーをかける考え方。
3、マイナス思考
物事の悪い面だけを強調してとらえる考え方。
4、拡大・過小評価
失敗や悪い出来事ばかりを大きくとらえ、良い出来事はささいなこととして、とらえる考え方。
参考:三川俊樹 (2004). 認知の歪みと主観的不健康感の関係(2). 追手門学院大学人間学部紀要, 17号, 57-72.
自動思考とスキーマの関係性
自動思考は、私たちが持つ「スキーマ」と呼ばれる心のパターンに影響を受けています。スキーマとは、これまでの経験や知識によって形成された「心の地図」のようなものです。このスキーマによって、同じ出来事でも人によって異なる反応が生まれます。
例えば、過去に多くの成功体験を積んだ人は失敗をしても「次は頑張ろう」というポジティブな自動思考を持ちやすい傾向にあります。一方で、失敗した経験の多い人は、うまくできないことに対して「やはり自分ではだめなんだ」というネガティブな自動思考が生じやすくなるのです。
しかし、失敗や挫折を多く経験した人であっても、自動思考は改善が可能です。改善方法については、「自動思考の改善方法」の項で解説します。
参考:神原広平ら(2015). 認知機能がネガティブな自動思考・スキーマに与える影響. 行動療法研究, 41巻,3号.
自動思考が止まらない理由
自動思考を止めようと思っても、自力で制御することは困難です。
その理由のひとつは、自動思考の名が示すとおり、私たちの意志にかかわらず思考が自動に湧いてくるためです。例えば、太陽を浴びればセロトニンが否応なく分泌されるように、1日に約6万回も湧き上がる自動思考を人間の意識で完全に止めることは不可能と言えます。
もうひとつの理由は、思考を止めようとすると、余計にそのことを考えてしまうためです。
「考えないようにしよう」と思うと、余計にそのことを考えてしまう性質が人にはあります。例えば、心理学の分野で有名な「シロクマ実験」と呼ばれる思考抑制に関する実験研究があります。
「ほかの何を考えても良いが、シロクマのことを考えてはいけない」といわれたとしましょう。すると、どうしてもシロクマのことが頭に浮かぶのではないでしょうか。
別のことを考えていても「自分はシロクマ以外のことを考えている」と思った時点で、シロクマに意識が向いていることがわかります。つまり、「考えてはいけない」と思えば思うほど思考が止まらなくなるのは、人間の特性なのです。
参考:宮元博章(1995).D.M.Wegnerらによる思考抑制の実験的研究(白熊研究)について : パラドクシカルなのは何か?.信州大学人文学部人文科学論集,29号,P55-68.
自動思考の改善方法
自動思考を完全に止めることは困難ですが、ネガティブな自動思考を軽減したり、自動思考から意識を逸らしたりすることは可能です。
自動思考の改善方法を、見ていきましょう。
コラム法を用いる
自動思考の改善には「コラム法」が有効です。
コラム法とは、瞬間的に浮かぶネガティブな自動思考をその場で書き出す方法のことで、「認知再構成法」とも呼ばれています。
頭に浮かんだ考えを文字にし、その内容を客観視することで、思考の巡りの抑制が期待できます。
例えば、「自分は役に立たない」という自動思考が湧いたとき、それを紙に書いたとしましょう。「自分は役に立たない」という思考を視覚的に認識することで、自動思考の巡りが一時的にストップします。そして「本当に役に立たないのか?」「どうしてそう思う?」など、否定的な自動思考を冷静に検証するきっかけとなるのです。
コラム法を繰り返すことで思考の癖を改善できる可能性があるため、毎日短時間でも実践することが大切です。
参考:大野 裕 (2008). 認知再構成法.精神神経学雑誌, 110巻, 6号.
運動をする
ウォーキングや軽いジョギング、ストレッチなどの適度な運動は、身体だけでなく心にも良い影響を与えます。運動には脳内のセロトニンやエンドルフィンといった「幸福ホルモン」の分泌を促す効果があり、ストレスを軽減するとともに、前向きな気持ちが芽生えやすくなるためです。
また、運動中は身体の動きに意識が向くため、ネガティブな思考から自然に距離を置くことができます。
自動思考に悩む方は、軽い運動を習慣づけてみるのもおすすめです。
参考:瀬藤乃理子 (2018). メンタルヘルスに対する運動の介入効果に関する近年の知見. 甲南女子大学研究紀要, 52巻.
気晴らしをする
思考に焦点をあてた研究では、ほかの活動や思考に注意を向けることで、ネガティブな自動思考から意識をそらせるという結果が明らかになっています。
自動思考が湧いてきたら、気晴らしをしてみましょう。
気晴らしの内容は何でも構いません。音楽を聴いたり動画を見たり、本を読んだりするのも良いでしょう。好きなものに触れることで心が穏やかになり、前向きな気持ちを取り戻しやすくなります。
参考:義田俊之(2019). 抑うつにおける自動思考の制御困難性と思考コントロール方略:ABMCモデルの提案とBMCの検証.九州大学学術情報リポジトリ.
友人・同僚などと交流する
友人や同僚など、他者と交流をすることも自動思考の緩和に効果的です。
会話によって自動思考が遮られると同時に、親しい人とのやりとりによって新しい思考の視点が開け、ネガティブな考えを払拭できることもあります。
自動思考に悩む方は、積極的に他者と関わりをもつと良いでしょう。
参考:義田俊之(2019). 抑うつにおける自動思考の制御困難性と思考コントロール方略:ABMCモデルの提案とBMCの検証.九州大学学術情報リポジトリ.
マインドフルネスを行う
自動思考の改善には、マインドフルネスも有効です。
マインドフルネスは心をリセットし、今この瞬間に集中するためのセルフケアです。自動で浮かんでくる感情や思考を「あるがまま」に受け入れ、そのまま流す練習を繰り返すことで、ネガティブな自動思考から距離を取ることができます。
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まとめ|自動思考を改善してストレスを軽減しよう
自動思考は、誰にでも起こる心の反応です。自動思考に苦しめられることもありますが、適切な方法を取り入れることで改善もできます。
ネガティブな自動思考は認知を歪め、心を不安定にさせる原因にもなります。ご紹介したマインドフルネスなどの改善方法を実践し、自動思考によるストレスを軽減しましょう。
自動思考に有効なマインドフルネスの詳しい内容や効果などについては、「マインドフルネスとは?意味・効果・仕組みなど全てを体系的に徹底解説」で解説しています。ぜひ、こちらも参考にしてみてください。