完璧主義をやめたい人へ。今日からできる治し方とやめる方法
「なんでも一番じゃないと気が済まない」「完璧でなければ意味がない」「みんなから好かれなければいけない」
こういった考えや思いの背景には、「完璧主義」が潜んでいると考えられます。
完璧主義は、高い目標を達成しようと努力する原動力となる一方で、過度な完璧主義は人間関係や仕事にも悪影響を及ぼしてしまうことがあります。
この記事では、臨床心理士・公認心理師が完璧主義の原因や特徴、克服するためのおすすめの方法を紹介します。
完璧主義とは
完璧主義とは、何事においても完璧な状態を目指し、高い目標を設定して努力する傾向のことです。
より良い結果を求めて努力を続ける一方、「100点以外は意味がない」「完璧にできていないと気が済まない」といった思考になってしまうこともあります。
完璧主義は、適度であれば成長の原動力となりますが、行き過ぎると心身の健康を損なう可能性もあるので注意が必要です。
完璧主義な人の特徴
カナダの心理学者Paul Hewittは完璧主義を3つに分類しました。
・自己志向的完全主義:「自分」が「自分」に対して完全さを求める傾向
・他者志向的完全主義:「自分」が<他者>に対して完全さを求める傾向
・社会規定的完全主義:<他者>が「自分」に対して完全を求めていると考える傾向
それぞれの特徴をわかりやすく解説します。
参考:Paul Hewittら (1991). Perfectionism in the self and social contexts: Conceptualization, assessment, and association with psychopathology. Journal of Personality and Social Psychology,60,(3).
自己志向的完全主義:コツコツがんばるが計画が乱れると不安になる
完璧主義の人は、地道にコツコツと物事を進めることができます。完璧を目指すがゆえに、綿密な計画を立て、そのプランを着実にこなすことを考えるからです。
しかし、少しでも計画が予定通りに進まないと混乱し、そこで歩みが止まってしまうこともあります。
自己志向的完璧主義の場合、自分自身に対して完璧を求めるあまり、少しでも計画から外れると、大きなストレスを感じ、行動に移せなくなってしまうという傾向があります。
他者志向的完全主義:自分にも他人にも高い理想を求める
完璧主義な人は、優秀な人が多いのも事実です。常に高い目標をもち、その達成に向けて強い意志で努力を継続できるため、勉強や仕事で優れたパフォーマンスを発揮することが多いからです。
しかし、この完璧を追い求める思考は対人関係において困難を生じることがあります。自分自身に求める高い基準を他の人にも同様に期待し、それに沿わない状況に強い不満や焦りを感じやすいのです。
特に親密な人間関係において、この傾向は顕著に表れます。例えば、パートナーと理想的な関係性を求めるあまり、少しの不満も許せなかったり、負担をかけすぎてしまったりして関係がうまくいかなくなる原因となることがあります。
社会規定的完全主義:自己評価が低い
完璧主義の人は自分に対する評価が厳しく、常に社会や他人から求められる完璧を目指してしまう傾向があります。その結果、他人に対して良い印象を与えようと無理をしてしまったり、心の余裕を失いストレスを抱え込んでしまうことがあります。
また、失敗することを極端に恐れ、新しいことに挑戦しづらくなります。周りや社会は変化しているのに、完璧である自分を変えることができず、古い考えや評価にとらわれたままになってしまっているのです。
完璧主義になってしまう原因
では、なぜ人は完璧主義になってしまうのでしょうか。
ここでは社会的・環境的な原因と個人の原因の二つに分け、それぞれの詳細を見ていきます。
実際には、この二つの原因が複雑に絡み合いながら完璧主義的な発想が生まれますが、ここではわかりやすさを優先して便宜的に二つに分けて説明します。
社会的・環境的な要因
私たちは幼いころから、テストなどで1点でも高い点数を取るために常に努力し、「100点を目指そう」とする環境に置かれていました。
例えば、90点を取っても「もっとできるはずだ。100点を目指そう。」と言われ、完璧な100点こそが褒められる対象だと教え込まれてきた経験は、多くの人にあるのではないでしょうか。
このような経験の積み重ねが、心のどこかで「完璧でなければ認めてもらえない」という思いを植え付け、完璧主義へとつながる原因の一つになっているといわれています。
個人的な要因
責任感が強く、几帳面な性格の人ほど、完璧主義になりやすい傾向があります。理想が高く、いつも自分のベストを尽くさないといけないと考えたり、目標に届かないとわかると途端に投げ出してしまったりする白黒思考の人も完璧主義になりやすいといえます。
この白黒思考を持つ人は、少しでも完璧な状態から外れると、大きなストレスを感じます。例えば、テストの点数は「100点」か「それ以外」と考えるように、物事を二極化する傾向があります。そのため、完璧な状態を保とうとするあまり、行動が極端になりがちです。
このような完璧主義的な行動は、日常生活に支障をきたし、心の健康を損なう可能性もあります。
「白黒思考とは?原因や特徴、改善方法を詳しく解説!」では、白黒思考について詳しく解説しています。ぜひご覧ください。
完璧主義の長所・メリット
完璧主義は良い面と悪い面、両方をあわせ持っています。ここではまず、長所・メリットを見ていきましょう。
仕事のクオリティが高い
完璧主義の人は、高い目標を設定しそれに向かって努力することが得意です。与えられた仕事に対して責任感を持って取り組み、最後までやり遂げます。さらに、詳細にこだわり、丁寧に仕事を進めるため、質の高い成果を出すことができます。
そのため、仕事のクオリティが高く、周囲からの信頼も厚いという長所があります。
向上心がある
完璧主義の人の長所として向上心の高さもあげられます。常に「もっと良くできるはずだ」という意識を持ち、現状に満足せず、改善を追求する姿勢は、自己成長を促す大きな力になります。
新しい知識やスキルを積極的に学び、より良い結果を出すために努力を惜しまないため、仕事やプライベートにおいても、高いパフォーマンスを発揮できる可能性を秘めています。
チームのパフォーマンスが向上する
さらに、完璧主義の人の常に上を目指す姿勢は周囲にいる人たちに影響し、士気を高めることにも寄与します。
完璧主義の人は、現状に満足せず常に改善点を見つけようとするので、例えばプロジェクトリーダーなどになると、チーム全体を引っ張り高品質な成果を出すことができるでしょう。
完璧主義の短所・デメリット
完璧主義は、常に完璧を目指し努力を続ける素晴らしい傾向がありますが、実は多くのデメリットも潜んでいます。
先延ばししがち
完璧主義な人は、「完璧にできないかもしれない」という不安から、行動を先延ばしにしてしまうことが多くあります。「完璧にできないかもしれない」「失敗したらどうしよう」といった不安から、最初から取り組むことを躊躇したり、細部にこだわりすぎて全体の進捗が遅れてしまったりすることも。
また、理想と現実のギャップに苦しみ、最初や途中でやる気を失ってしまうことも、先延ばしの原因の一つです。
ストレスが増加する
完璧主義の背景には他人からの評価を気にする心理が潜んでいます。
他人の評価を気にして完璧な状態を維持しようとすると、心は休まらず、慢性的な緊張状態に陥ります。完璧を求めすぎて、自己評価が低くなってしまったり、常に一番良い状態を保持しようと無理をしすぎて、心身にストレスを抱えてしまうこともあります。
実際に完璧主義者は、摂食障害、不安障害、うつ病のリスクが高いという研究もあります。完璧主義だと自覚していて、眠れない、食欲がないなどの症状が出ている場合は、医療機関や専門家に相談することをおすすめします。
参考:Sarah J. Eganら(2011)Perfectionism as a transdiagnostic process: A clinical review.Clinical Psychology Review,31,2.
チームワークが乱れる
チーム活動の場合、一人の完璧主義がチームワークを乱すリスクもあります。完璧主義な人が本質的でない細部にこだわり続け、一向に物事が前に進まない可能性があるからです。
また、完璧主義な人は、自分だけでなく周囲の人にも完璧を求める傾向があり、人間関係を悪化させる原因となることがあります。
完璧主義のやめ方
完璧主義のデメリットのなかでも、特に自分自身に完璧を求めすぎてしまう傾向は、抑うつや不安障害といったメンタルヘルスに大きくかかわるため、注意が必要です。
ここでは完璧主義のやめ方や上手なつき合い方について紹介します。
参考:桜井 茂男ら(1997).“自己に求める完全主義”と抑うつ傾向および絶望感との関係.心理学研究.68.3
他人の評価を気にしない
完璧主義の思考の傾向の一つに「他人から完璧を求められている」という考えがあります。小さなころから常に100点を目指すように促されてきた社会的背景や、生真面目で丁寧な資質が影響しているかもしれません。
このような完璧主義の思考を手放すためには、他人の評価を気にしすぎないことが非常に重要です。自分の頑張りを自分で評価する軸をしっかりと持つことが、完璧主義の克服への第一歩だといえます。
目的を思い出す
完璧主義な人は細部まで完璧を目指しすぎて、計画が進まなかったり、途中で投げ出してしまったりすることがあります。
そんなときには、その行動の最初の目的を思い出すことが重要です。
「なぜこの計画を始めたのか」「最終的に何を達成したいのか」という根本的な目的をもう一度明確にすることで、不要な部分にこだわりすぎず、前に進むためのモチベーションが得られます。
自分を大切にする
完璧主義は、高い理想を持つがゆえに些細なミスも許せず、常に自分を否定しがちです。他人と比較したり、過去の失敗を引きずったりすることで、自己評価が低くなり、新たな挑戦を恐れるようになります。
まずは、自分が完璧主義であることを認め、受け入れることが重要です。完璧主義は性格の一部であり、すぐに変えられるものではありません。ありのままの自分を受け入れ、大切にしましょう。
自分が完璧主義であると気づくことができたら、目的を果たすためには、自分がどんな状態だったら良い結果が出せるかを考えてみましょう。
常に完璧を目指し限界まで自分を酷使するのではなく、適度な休息やメンテナンスを行い、バランスの良い生活を送ることが目的までの最短距離だとわかると思います。
加点方式を採用する
完璧主義の短所・デメリットを克服するには「加点方式」を採用するのも重要なポイントです。
「減点方式」とは、完璧な状態を100点と想定し、欠点を見つけるたびに点数を引いていく考え方です。この方法では、私たちの意識は自然と欠点や不足部分に向かい、ネガティブな視点に支配されがちです。
一方、「加点方式」では、ゼロからスタートし、良い点を見つけるたびに点数を積み上げていきます。この視点に立つと、些細な進歩や努力も価値あるものとして認識でき、「確実に成長している」「一歩ずつ前進している」という実感が得られます。
小さな成功も認め、プロセスを大切にする加点方式の考え方を身につけることで、より健全で前向きな自己評価が可能になるでしょう。
完璧主義をやめたいならマインドフルネスがおすすめ
では、具体的にどんなことをすれば完璧主義をやめられるのでしょうか?
ここでは、完璧主義を克服するのにおすすめの方法としてマインドフルネスをご紹介します。
マインドフルネスは、継続することでその効果が高まります。ぜひ習慣化して、日常生活に取り入れてみてくださいね。
マインドフルネスとは?
マインドフルネスとは、「今この瞬間の出来事に意識を向け、評価や判断をせず、ありのままに気づいている状態」のことです。
マインドフルネスを実践することで、集中力や客観視する力を養うことができます。また、思考や感情、不安やストレスなどから意識的に距離を置くことで心のコンディションを整える効果も期待できます。
マインドフルネスの意味や考え方についてさらに詳しく知りたい方は「マインドフルネスとは?意味・効果・仕組みなど全てを体系的に徹底解説」を参考にしてください。
完璧主義をやめるのにマインドフルネスが効果的な理由
完璧主義の人は常に完璧を目指し、努力を惜しまないポジティブさがある一方、現在の自分を低く評価し、欠点や不足部分を探してしまいがちです。
しかし、マインドフルネスは「今」に意識を集中させ、その状態を受け入れることを促します。完璧ではない自分を受け入れることで、自己肯定感が高まります。
具体的には呼吸に意識を集中したり、体の細部を感じたりすることで、過去や未来の思考から解放され、現在に根ざした考え方ができるようになります。否定的な感情もただ一つの感情として受け入れ、そのまま観察することで、感情に振り回されることがなくなります。
「今、この瞬間」に意識を集中し、自分自身と優しく向き合うことで、完璧主義から脱却し、より自分らしく生きる一歩を踏み出すことができるようになるのです。
参考:John D Kelly IV (2015).Your Best Life: Perfectionism–The Bane of Happiness. Clin Orthop Relat Res,473,(10).
マインドフルネスのやり方について詳しく知りたい方は「初心者でも簡単にできるマインドフルネス瞑想のやり方を解説!毎日5分で効果を実感」で詳しく解説しています!ぜひご覧ください。
マインドフルネスで完璧主義をやめたい人は
マインドフルネスで完璧主義を克服したい人は、プロのインストラクターと一緒にマインドフルネスを行うことをおすすめします
マインドフルネスはYoutubeや本など、さまざまな練習方法がありますが、感覚を掴むまでに時間がかかったり、わかりにくい概念があったりするため、プロから正しいマインドフルネスの方法を学ぶのが一番効率が良いからです。
MELONのオンライン・マインドフルネスサービス「MELON オンライン」では、一般社団法人マインドフルネス瞑想協会の資格を持つプロのインストラクターが、丁寧にわかりやすくレッスンを行うので安心です。
自分を客観的に観る“メタ認知能力”を高める「Recognition」や、マインドフルネスの基本が学べる「Basic」など、あなたのお悩みにアプローチするクラスが見つかります。
オンラインでいつでもどこでもできるので、興味のある方はまず2週間から始めてみませんか?
まとめ|「完璧な自分」ではなく「ありのままの自分」を大切に
今回は完璧主義のメリットやデメリット、克服方法などを紹介しました
完璧主義である自分を受け入れ、デメリットともうまく付き合うことが大切です。完璧でなくても今この瞬間を生きる、ありのままの自分を受け入れることで、前向きになれたり、周囲にも優しくなれる気持ちが芽生えてきます
また、完璧主義を克服することは、一朝一夕にできることではありません。焦らず、ゆっくりと自分のペースで取り組んでいきましょう。