共感力とは?共感力が高い人の特徴や高める方法を解説
共感力が高いと、良好な対人関係を築きやすくなり、日々の暮らしや仕事などにも良い影響をもたらします。
共感力はトレーニングによって高めることが可能です。共感力の向上を目指す方は共感力について学び、効率的なトレーニング方法を日々に取り入れてみましょう。
今回は共感力とはどのようなものか、共感力が高い人や低い人の特徴、さらに共感力の具体的な高め方について紹介していきます。
共感力とは
共感力とは、「相手の立場に立って、相手の感情に寄り添う力」を指します。共感力は大きく分けて「認知的共感」と「情動的共感」の2種類に分類され、それぞれに特徴があります。
以下で詳しく見ていきましょう。
認知的共感
認知的共感とは、相手の立場を理解しようと努めることを指します。
たとえば友人から仕事の悩みを打ち明けられたとき、認知的共感力の高い人は、友人の状況や感情を話の内容から理解し、相手を尊重しながら客観的な立場における助言ができます。
自分の立場には置き換えず、相手の状況などを理解することに留めるのが、認知的共感の特徴です。
情動的共感
情動的共感とは、他者と同じ感情になることを指します。
情動的共感力の高い人は、相手に感情移入をすることに長けており、気持ちの深い部分まで寄り添うことが可能です。相手の話を聞き、冷静に理解する認知的共感とは異なり、情緒的共感は相手の感情に触発されて生じることから、無意識な反応といえます。
一般にいわれる「共感」はこちらの情動的共感をイメージする方が多いかもしれません。
参考:山口亮祐ら(2018).他者の表情観察を通した認知的共感と情動的共感の神経基盤ー成人女性を対象としてー. 臨床神経生理学, 46巻, 6号.
共感力が高い人の特徴
上述したように共感には2つの種類があり、それぞれがお互いに作用しあったり単独で働いたりすることで、他者に対して共感を抱きます。
ここからは、この2つの共感力に優れた人の特徴を見ていきましょう。
相手の話や物事への関心が高い
共感力の高い人は、他者に対する興味関心が強い傾向にあります。「相手は何を考え、何を感じているのか理解したい」といった知的好奇心が強いためです。
知的好奇心を満たし他者を分析することだけが目的ではなく、相手を理解した上で思いやる気持ちも持ち合わせています。
自分と異なる考えも肯定的に受け止める
共感力の高い人は、「相手の話」と「自分の考え」を結びつけることはしません。「この人はこういう考えの人なんだ」「この人はどうしてこういう行動をとったのだろう?」と、あくまでも話の主人公を「相手」に設定し続けることができます。
相手の立場にたって物事を考えるため、自分と異なる意見も肯定的に受け止めます。
話以外からも相手の感情を読み取れる
共感力の高い人は、観察力も高い傾向にあります。
たとえば、相手が「すごく楽しい」と言っている場合でも、言葉が棒読みだったり目が笑っていないことから「本当はつまらないのかもしれない」と読み取ることができます。
共感力と観察力が比例する理由は、認知的・情動的に相手に共感を示すためには、相手の話の内容だけではなく、表情や姿勢、息遣いや声色、目線など、あらゆる情報を複合的に把握する必要があるためです。
共感力がない人の特徴
一方で共感力がない人は、どのような人物なのでしょうか。ここからは共感力がない人の特徴も見ていきましょう。
自己顕示欲が強い
共感力が低い人は、他者に寄り添うよりも「自分を理解してもらいたい」という意識のほうが強い傾向にあります。
共感力がないことが自分ファーストの直接的な原因になるのではなく、自分ファーストになってしまった理由の背景に、他人を思いやる共感力が育ちにくい環境があるようです。
たとえば学校や会社などさまざまな重圧に耐えている人にとって、他人を思いやる余裕を持つことは困難です。自分が成功することや努力を認めてもらうことに集中しているため、他人の悲しみや喜びの言葉を聞いても、「自分より不幸」「自分より幸せ」が判断基準となってしまい、共感を示すことが難しい傾向にあります。
参考:Speaking of Psychology: The decline of empathy and the rise of narcissism, with Sara Konrath, PhD|American Psychological Association
感情表現が不足している
感情表現と共感の正確さの関係性について調べた研究では、感情表現の不足と共感力の低さに、結びつきがあることも判明しています。
自身の感情表現のスキルが不足していると、相手の示す感情表現も正確に読み取ることができず、共感することが難しく感じられるのです。
参考:The Association Between Emotional Expressions and Empathic Accuracy|National Library of Medicine
幼少期に心に深い傷を負った経験がある
学生を対象に、幼少期のトラウマと共感性を調べた研究では、幼少期に何らかの対人関係で傷を負った経験のある人は、偏見や自己志向の観点から物事を見てしまいがち、という結果が出ています。
幼い頃に健康的な対人関係を築けなかったことで、「自分と相手は対等ではない」という意識が育ち、相手の立場になって考えることや気持ちを理解することが困難になるのです。
参考:Yanan Zhengら (2022).Research on the Relationship between Empathy, Belief in a Just World, and Childhood Trauma in Pre-Clinical Medical Students.Healthcare , 10, (10).
共感力を高める方法
共感力はトレーニングによって高めることが可能です。
ここでは共感力を鍛えられる簡単な方法について、解説していきます。
脳の「共感」を司る部分のトレーニングをする
共感は、脳の働きによって生じます。脳の共感を司る部分をトレーニングすることで、共感力の向上も期待できるでしょう。
マインドフルネスは、脳の共感力を高めるのに必要な領域である「頭前野」「前帯状皮質」「前島皮質」の発達を促します。
参考:Reginald Paul R. Centenoら(2020).Effect of Mindfulness on Empathy and Self-Compassion: An Adapted MBCT Program on Filipino College Students. Behavioral Sciences,10,(3).
マインドフルネス瞑想にはさまざまなやり方があり、共感力を高めたい場合は特に「慈悲の瞑想」がおすすめです。慈悲の瞑想では、自分と他者を思いやる言葉を発しながら、慈しみの心を育てます。他者に寄り添う心の育成に効果があるため、共感力を育てたい方にぴったりの瞑想方法です。
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相手の心情を想像しながら傾聴する
相手の状況や気持ちを常に想像しながら話を聞くのも、共感力のトレーニングとして有効です。他者志向の視点を取り入れることで、共感力や思いやりの気持ちを育む効果が期待できます。
心情を読み取るには、相手の言葉だけでなく表情や仕草なども観察することが大切です。
参考:Cultivating empathy|American Psychological Association
相づちのバリエーションを増やす
相づちは相手に「あなたの話をしっかりと聞いていますよ」とのメッセージを伝えるのに効果的な動作です。
人は、相づちを適切に打ってくれる人と話すと「ちゃんと聞いてくれている」と安心します。安心することで、話し手側の気持ちがよりオープンになれば、聞き手側も共感をしやすくなります。
また「聞き手側の相づちが抑制されることで、話し手側の背景や感情を想像しにくくなる」という研究結果もあります。
このように、相づちのバリエーションを増やすことは、相手に安心して話をしてもらうと同時に、自身の共感力向上にも役立つのです。
参考:稲井文(2004).あいづちの心的効果について.京都大学大学院教育学研究科紀要,第51号.
共感力を身につけるメリット
共感力を身につけることで、人間関係の良好化や自分自身のスキルアップなどのメリットを得られます。
共感力を高めることで得られるメリットの詳しい内容を、見ていきましょう。
信頼関係が構築しやすくなる
共感力を高めることで、相手が「この人、自分のことをよくわかってくれるな」と感じ、信頼を示してくれます。
信頼関係が構築され、相手とのつながりが密になれば、困ったときに支え合ったり喜びを共有したりと、暮らしの質もぐっと高まります。
価値観や知識のインプットができる
共感力が身につくことは、相手の話や状況に疑問を抱いたり、違う考えを受け入れる姿勢を育んだりすることにつながります。
共感力を高めることによって、これまで否定的になりがちだった考えや意見にも柔軟に向き合えるようになれれば、自分の価値観や持っている知識がアップグレードされていくでしょう。
共感力を高める際に意識したいポイント
共感力が高いことで、人間関係や自分自身にも良い影響を与えます。
しかし共感力はやみくもに高めず、次の点に意識を向けて少しずつ育むことが大切です。
共感をしすぎない
時と場合によっては、共感は精神を摩耗させる原因にもなります。
相手に感情移入しすぎて自分自身が参ってしまわないように、共感の度合いには注意しましょう。
たとえば、医師は患者の痛みに寄り添いすぎて自身が擦り減ってしまわないよう、共感をしすぎないこともあります。
話し相手が聞き手の感情を操作しようとしたり、共感が悪影響を生んでしまったりする場合もあるので、相手の意見や状況から、本当に共感が必要な場面かどうか見極めることが大切です。
また、共感によって精神的に参ってしまったときのために、気持ちをリセットする方法も用意しておきましょう。
参考:The limits of empathy|The british psychological society
以下の記事では、自分の気持ちを落ち着かせ、優しく労る「セルフコンパッション」のやり方について詳しく解説しています。共感によって気持ちがしぼんでしまったときは、ぜひ実践してみてください。
共感できない場合は理解に努める
相手に寄り添うとき「相手は自分自身ではない」ということを、十分に理解しておく必要があります。
他者のすべてを共感することはできないため、同じ感情になれないこともあるでしょう。その際は無理に感情移入せず、「理解する」だけに留めることが大切です。
共感ができなくても、立場や心情を理解することが、相手の助けになるケースもあります。
参考:Cultivating empathy|American Psychological Association
まとめ|共感力を高めて、仕事でもプライベートでも自分らしく生きる
共感力を高めることで、人間関係の良好化や知識や価値観のアップデートなどが叶います。
仕事の場やプライベートなどの環境も良くなる可能性が高いため、共感力に悩む方は、ぜひ記事を参考にして共感力を高める方法を取り入れてみてください。
共感力を高めるトレーニングとして、マインドフルネスが有効です。マインドフルネスにはさまざまなやり方があり、その中には共感力や相手を思いやる気持ちを育むものもあります。
以下の記事で、マインドフルネスの全体像を解説しているので、興味のある方はぜひ参考にしてください。