自分への思いやりを育む方法とは?自分を大事にする考え方やその効果
つい自分を責めてしまったり、自分に劣等感を抱いたりすることはありませんか?そんな人こそ、自分を思いやる考え方を身につけることをおすすめします。
自分を思いやる考え方は「セルフ・コンパッション」と呼ばれています。セルフ・コンパッションを身につけ自分への思いやりを育むことで、困難な状況に直面したときでも自己批判をせずに受け入れられるようになります。
この記事では、自分を思いやる方法としてのセルフ・コンパッションを解説します。自分を思いやることで他人にも優しくなれ、チャレンジ精神も増すので、ぜひ実践してみてください。
「自分を思いやる(セルフ・コンパッション)」とはどういうこと?
自分を思いやる方法の1つである「セルフ・コンパッション」とは、困難や失敗をしたとき、自分を責めずに温かく受け入れる考え方のことを指します。
自分を思いやる方法はさまざまです。睡眠な睡眠や3食しっかり食べるといった「自分の健康を気遣う思いやり」や、美容院や勉強などの「自己投資」も自分への思いやりの一つといえます。
こうした「身体や外見」への思いやりのほかに、セルフ・コンパッションは特に「心」に向けた優しさを指します。
例えばつらいときに自分を責めず「よく頑張っている」と声をかけたり、失敗を受け入れて「誰でもうまくいかないことがある」と理解したりと、親友に接するように自分に思いやりを向けることがセルフ・コンパッションの考え方です。
落ち込んでいると食事や睡眠、自己投資さえ負担に感じることがありますよね。こういうときこそセルフ・コンパッションが大切です。自分の心を温かく受け入れることで、少しずつ気持ちが前向きになり、日常生活や自己投資への意欲も戻ってきます。
セルフ・コンパッションの構成要素
自分の心を思いやる方法であるセルフ・コンパッションは、次の3つの要素で構成されています。
・マインドフルネス
・共通の人間らしさ
・自分へのやさしさ
「マインドフルネス」は自分自身の「今」を観察し、自分の状況を客観的に受け止める取り組みのことです。セルフ・コンパッションを行う上で自分の心を見つめるマインドフルネスは、欠かせない要素といえます。
「共通の人間らしさ」は、苦しみを経験するのは自分だけではないことを理解する考え方のことです。誰もが辛い体験を乗り越えたり胸に抱えたりして日々を過ごしていると認識し、1人で苦しみに耐える孤独感を和らげます。
「自分へのやさしさ」は、苦しんでいる自分自身を「親友」のように受け止め、優しさを向ける考え方を指します。自分を優しく労わることで、モチベーションやレジリエンス(転んでもそこから立ち上がる力)が高まり、ネガティブな感情から自分自身を救い出すことが可能です。
セルフコンパッションとは何かは、こちらの記事で詳しく説明しています。
自分を思いやることが必要な人とは?
自分への思いやりが必要な人とは、どのような人なのでしょうか。セルフ・コンパッションを取り入れ、自分への思いやりを育むべき人の特徴をご紹介します。
つい自分を責めてしまいがちな人
失敗やミスをしたとき、自分を強く責めてしまう人は、セルフ・コンパッションが必要です。
自分が想定していたとおりに状況が進まなかった際、「もっと頑張れたのでは」「自分のせいだ」などと自分を責め続けてしまうと、いずれ心が押し潰されてしまうかもしれません。また自分を責め続けた結果、これ以上自分を嫌うのを恐れて、新しいことに踏み出すのを躊躇(ちゅうちょ)してしまうかもしれません。
失敗しても「よく頑張ったね」「チャレンジできたことがえらいよ」といった言葉を自分自身にかけることで、失敗を成長の一部として受け入れることができ、自己成長につながります。
参考:セルフ・コンパッションと「あるがまま」|公益社団法人日本心理学会
辛い状況にある自分を直視するのが難しい人
大きなトラブルやストレスを抱えている自分を受け入れることができない人も、セルフ・コンパッションを実践したほうが良いでしょう。
自分が持つ感情を否定したり、無理に奮い立たせたりすることで、心の苦しみを押し込めてしまいます。蓋をしてしまった感情は、やがて別の形で心身に悪影響を及ぼすことがあるかもしれません。
セルフ・コンパッションによって自分の状況や感情を見つめ「今、自分はつらい」と気づくことで、現況を受け入れる力を育てます。自分の感情を否定せず温かく見守ることができれば、今、本当に自分がするべきことやトラブルへの適切な対処方法も見えてくるでしょう。
参考:マインドフル・セルフ・コンパッション|UC San Diego Center for Integrative Health
自分を思いやるためのセルフ・コンパッション実践法
自分を思いやるセルフ・コンパッションの実践に、特別なものは必要ありません。
まずは静かな環境で目をつぶり、自分が楽だと感じる姿勢を取りましょう。その後、以下のステップに沿ってセルフ・コンパッションを進めていきます。
(1)誰かが落ち込んでいる時にどう寄り添うか考える
親友が落ち込んでいる時、どのように感じてどんな言葉をかけますか?その時の自分の声色や雰囲気はどのようになるでしょうか?
まずは大切な人に寄り添うときの自分の状態を、具体的にイメージしてみましょう。
(2)自分が落ち込んでいる時にどう対処しているか考える
自分自身が追い詰められていたり、苦しんでいる時、どのように感じてどんな言葉を自分自身にかけていますか?
その時の声色や雰囲気まで具体的にイメージしてみましょう。
(3)他人を思いやるように、自分も思いやる
1と2を踏まえて、対他者と対自分の寄り添い方の違いに着目してみます。
自分に対する寄り添い方はなんとなく雑になってしまい、「何やってるの?」「もっとしっかりしなきゃ」といった、自分を責めたり否定したりする言葉をかけてしまう方も多いのではないでしょうか。
一方で親友には「おつかれさま」「よくがんばったと思うよ」など、優しい言葉を投げかける方が多いはずです。
セルフ・コンパッションでは「他人を思いやるように、自分も思いやる」ということが非常に大切です。自分自身が困難な状況にあるとき、親友に寄り添うように自分を受け止めてみてください。
他者を思いやるように自分を思いやることを習慣化することで、つらいときにも安定した気持ちで向き合えるようになります。
より深く自分を思いやるための4STEP
ここからはより深く自分を思いやる方法をご紹介します。セルフ・コンパッションと組み合わせてチャレンジしてみてください。
STEP1:困難な状態を思い浮かべる
まず、今の生活のなかで辛いなと感じている状況やストレスを感じていること、 困難だなと感じるような内容を思い浮かべてみてください。
思い浮かべるだけで辛い場合は無理をせず中断し、優しい言葉を自分に投げかけるなど、自分を思いやる環境を作ってください。
その後、調子の良いときに再チャレンジしてみましょう。
STEP2:感情にラベルを貼る
困難な状態を思い浮かべた時に、心のなかにはどのような感情が生まれるでしょうか?そのなかで一番大きい感情にラベルを貼ってみましょう。怒り・悲しみ・不安・喪失感・混乱・恐怖・絶望感といったものがあるかもしれません。
例えばそれが「悲しみ」だった場合、他者に寄り添うような気持ちで「そうだよね、悲しいよね」と優しい声で認めてあげましょう。
STEP3:身体に意識を向ける
身体全体へと注意を広げていき「今、どこで一番簡単にその感情を感じているかな」と、 頭のてっぺんからつま先までをスキャンしてみます。その感情がもっとも強く現れている場所を選んでみてください。因果関係がはっきりしている必要はありません。
例えば首の筋肉に重さを感じるかもしれませんし、心臓の部分がキュッと痛むかもしれません。その部位に寄り添いながら、和らげていきます。和らげるといっても何か特別なことをする必要はなく、手を当てて身体から伝わってくる温かさを感じたり、優しい言葉を声に出してみたりします。
「私が私に優しくありますように」
「私が自分の味方でありますように」
「完璧じゃない自分に優しくありますように」
このような言葉がおすすめです。
STEP4:不快な感情を許す
もし今の状態で不快な感覚や感情があったら、ただそれを許します。不快な感覚や感情にもただ居場所を与えて「それを取り去らなきゃ、なくさなきゃ」というニーズを手放します。
ここまででご紹介した「深く自分を思いやる方法」は、マインドフルネスの「慈悲の瞑想」を応用したものです。
慈悲の瞑想は、セルフ・コンパッションを育む上で重要な役割を持ちます。以下の記事で慈悲の瞑想について詳しく解説しているので、ぜひチェックしてみてください。
自分への思いやりを育むことの効果
自分への思いやりの心を育むことで、さまざまな良い効果を得られます。セルフ・コンパッションによって得られる内容を見ていきましょう。
参考:Kristin D Neff(2009). The Role of Self-Compassion in Development: A Healthier Way to Relate to Oneself. Human Development, 52, (4).
幸福感が増す
セルフ・コンパッションは、自分への思いやりを育むことで、他者への優しさが生まれます。自分を優しく受け入れることで、自分自身の気持ちに余裕が生まれ、人にも優しくできるためです。
その結果人とのつながりが深まり、孤独感や不安感が減少すれば、幸福感が向上します。
自尊心が育まれる
自分自身を思いやり、ありのままの自分を受け入れることで、自分の失敗や弱さなどマイナス面も「自分らしさ」として認められます。
自分が完璧である必要がないことを自分自身がしっかり理解することで、自尊心が育まれるでしょう。自尊心を持つことで、他人と比較して落ち込むことも減り、より前向きな生き方ができるようになります。
人に対しても寛容になれる
セルフ・コンパッションの要素には、「苦しみを経験するのは自分だけでない」と考える「共通の人間らしさ」が含まれます。
自分と同じように他人も苦しんでいることをセルフ・コンパッションを通して認識することで、他人の失敗や間違いにも寛容になれます。
チャレンジ精神が増す
自己批判が強いと、失敗を避けようとして新しいことに挑戦する機会を逃してしまいがちです。
しかし自己への思いやりのある人は、失敗しても自分を責めず、失敗を「成長の一部」として受け止めることができます。失敗に対して柔軟な思考を持つことで、ミスを恐れる必要がなくなり、新しい課題にも取り組みやすくなります。
まとめ|自分を思いやることは「生きやすさ」につながる
本記事では自分を思いやる方法である「セルフ・コンパッション」を詳しくご紹介しました。
自分に優しくしたり許したりすることで、自分を好きになる第一歩が踏み出せます。そして、自分への思いやりは、巡り巡って他者への優しさや共感にもつながっていきます。
「自分に厳しすぎるかもしれない」と感じる方は、今回ご紹介した方法をぜひ試してみてくださいね。
セルフ・コンパッションを構成する要素の一つ「マインドフルネス」をやってみたいけれど1人では不安という方には、MELONが提供するオンラインサービス「MELONオンライン」がおすすめです。
一般社団法人マインドフルネス瞑想協会の資格を持つプロのインストラクターが、丁寧にわかりやすく実践のサポートをするので安心して取り組めます。
2週間無料で体験できますので、気になる方はぜひチェックしてみてください。