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進化論からみるデフォルトモードネットワークの特性と、活用方法を解説

DMN進化論

最近注目を集めているデフォルトモードネットワークという言葉ですが、実際のところ

「そもそもどういう意味なのか分かっていない…」
「結局悪いものなの?良いものなの?」


と色々な疑問を抱えている方も多いのではないでしょうか。今回の記事ではデフォルトモードネットワークを生物進化の観点から解説していきます。網羅的に理解できる内容になっておりますので、是非最後までチェックしてみてくださいね!

デフォルトモードネットワークとは

腕を組む女性の画像

まずはデフォルトモードネットワークの定義と役割を確認していきましょう。

デフォルトモードネットワークの定義

デフォルトモードネットワーク(DMN)とは、ぼーっとしている時や特に何にも意識を向けていない時に活性化する脳内のネットワークを指します。これは車で例えるとアイドリングの状態に似ており、脳内では無意識かつ自動的に起こっている現象です。

DMNは脳内のおよそ60%〜80%のエネルギーを消費していると言われており、毎日脳内で発生している当たり前の現象だと言えます。

デフォルトモードネットワークの役割

DMN中に活性化する脳の部位は主に4つであり、それぞれの役割は以下のようになっています。

1. 内側眼窩前頭前皮質(OMPFC)→ 五感や身体の中からの感覚を「自分自身のもの」として認識する役割
2. 内側前頭前皮質(MPFC)→自分に関連する情報に対して評価や判断を行う役割
3. 前帯状皮質(ACC)自己と他者の区別を維持する役割
4. 後帯状皮質(PCC)→ 自己に関連する情報を「文脈・記憶・感情的な経験・社会的な相互作用・道徳的な考え」などと統合する役割

これら4つの部位で情報をやりとりすることで「自己や他者を正しく認識し、自分を自分たらしめる思考の流れを作る」のが、根本的なDMNの役割なのです。これが元となり、過去の経験から未来を予測したり、記憶と記憶を繋げたりといった重要な機能も持っています。

Yanli Lin, Courtney P. Callahan, Jason S. Moser. (2018). A mind full of self: Self-referential processing as a mechanism underlying the therapeutic effects of mindfulness training on internalizing disorders

デフォルトモードネットワークと生物進化の歴史

DMNは進化のどの段階で生物の脳に出現したのでしょうか。研究事例と脳の構造から考えます。

人類以外の動物におけるDMNの研究事例

DMNは人間の脳にしか存在しないのかというと、そうではありません。研究によると、マウスや犬といった一部の哺乳類や、猿やマーモセットといった霊長類の脳でも、DMNが存在することを示す脳活動が確認されています。しかし動物におけるDMNが人間と全く同じような役割を果たしているかという点においては定かではありません。

Hanbing Lu, Qihong Zou,Hong Gu,Marcus E. Raichle, Elliot A. Stein,Yihong Yanga. (2012). Rat brains also have a default mode network
Jennifer L. Robinson, Madhura Baxi, Jeffrey S. Katz, Paul Waggoner, Ronald Beyers, Edward Morrison, . . . Gopikrishna Deshpande. (2016). Characterization of Structural Connectivity of the Default Mode Network in Dogs using Diffusion Tensor Imaging
Clément M. Garin , Yuki Hori, Stefan Everling, Christopher T. Whitlow , FinneganJ. Calabro, . . . Christos Constantinidis. (2022). An evolutionary gap in primate default mode network organization

脳の進化から考えるDMN

脳の構造を示した図

生物の脳を「脳幹・大脳辺縁系・大脳皮質」という3つに分けて考えた時、DMNは活動している部位から考えると大脳辺縁系と大脳皮質との間で情報をやりとりする働きになります。

生物の初期段階である魚類・両生類・爬虫類の脳内には、そもそも脳幹と大脳辺縁系しかありません。そのため彼らの脳内にDMNは存在しないと考えられます。

一方で哺乳類や霊長類まで進化が進むと、脳幹・大脳辺縁系に加えて「大脳皮質」が出現します。研究では一部の哺乳類と霊長類でDMNの存在を示す脳活動が確認されていますが、それは彼らが大脳辺縁系と大脳皮質を両方持っているからかもしれません。

人類とデフォルトモードネットワークの変遷

ここまでDMNについて詳しく解説してきました。ここからは人類とDMNの関係性がどのように移り変わってきたのかという点について掘り下げていきたいと思います。

狩猟採集の時代には「リスクヘッジ」として機能していた

人間が狩猟採集をして暮らしていた時代、DMNはリスクヘッジとして機能していたという説があります。例えば狩りをしている時、目の前にいる獲物にだけ集中していたら、もしかすると背後から肉食の獣に襲われてしまうかもしれません。

「獲物を狩りたいけれど、もしかしたら後ろから襲われるかもしれない。だから、背後に警戒しながら狩りをしよう。」という思考は、「目の前の状態を理解する→経験から未来のリスクを予測する→現在の行動を変化させる」という流れで構成されていますよね。これはまさにDMNが脳内で担う役割そのものです。

嗅覚や視覚が他の動物ほど発達していない人類にとって、DMNの働きは非常に大切であった可能性が示唆されています。

現代人にとっては「厄介者」の原因になることも

一方で現代人にとって、DMNは反芻思考(ぐるぐる思考)やマインドワンダリングと呼ばれる少し厄介な現象の原因になっています。これらの現象は、端的に説明すると「目の前の出来事に集中できておらず、同じ思考を繰り返したり、思考がさまよったりする」ことを指しています。

「目の前の出来事に集中できない」というのはDMNが元々担っていたリスクヘッジとしての役割を考えれば当然です。しかし現代人には「命の危険ほどではないストレスやプレッシャー」が数えきれないほど存在するため、DMNが過剰に活動してしまう場合があります。

DMNが過剰に活動すると反芻思考を引き起こし、場合によってはうつ病の原因になることもあります。かつては人類の生存に欠かせなかったDMNですが、時代の変化によって少しずつ厄介な面を見せてきたと解釈することもできます。

マインドワンダリングとDMNの関係性を詳しくい知りたい場合には、こちらの記事をチェックしてみてください。

デフォルトモードネットワークを味方につける方法

腕を広げる女性の画像

DMNは現代の人類にとって厄介者となってしまう時もありますが、マインドフルネスのスキルを身につけたり、リフレッシュを行ったりすることによって味方につけることができますよ!

マインドフルネスの実践

先ほどご紹介した通り、DMNが過剰に活動していると反芻思考やマインドワンダリングの発生に繋がってしまいます。実際に

「これ以上考えたくないのに、気づくと同じ思考を繰り返している」
「目の前の仕事や作業に集中したいのに、なぜかぼーっとしてしまう」

という瞬間は皆さんも経験したことがあると思います。このような状況を脱するためには、マインドフルネスを実践することが有効です。マインドフルネスは主に瞑想を通じて行う脳と体の休息法で、「今この瞬間に集中する」ことが重視されています。

マインドフルネスを実践すると、同じ場所をぐるぐるしたり、あちらこちらにさまよっていたりした思考が今この瞬間に戻ってきます。そして練習を重ねると、DMNが過剰に活動している時に「自分で思考のさまよいに気づき、自分で今ここに戻すことができる」ようになるのです。

そしてさらに、マインドフルネスを実践するとストレスの受け止め方がポジティブなものに変わります。するとDMNもひらめき力や創造力を高める方向に作用するようになるのです。マインドフルネスの具体的な実践方法にについては以下の記事で詳しく解説しています!

散歩・入浴等のリフレッシュ

DMNを味方につける方法として、散歩や入浴等のリフレッシュもおすすめです。そもそもDMNは脳が意識的に動いている時には発生しません。あくまでも私たちの意識がどこにも向いていない時に発生しているのです。

そのように考えると、散歩や入浴をしている時は「ぼーっとする」瞬間が多いと思いませんか?そのぼーっとしている間に、DMNが記憶と記憶、点と点を繋いでくれるのです。

シャワーを浴びている時にアイディアが浮かぶことを「シャワー効果」などと言ったりしますが、これの要因となっているのがDMNだと考えることもできます。作業に行き詰まって新しい発想が欲しい時には、散歩や入浴を取り入れると良いかもしれません。

進化論から見るデフォルトモードネットワーク|まとめ

辞書の上に虫眼鏡が乗っている画像

ここまで生物や脳の進化から考えるDMNと、その活用方法について網羅的にご紹介しました。少し難しい用語も出てきましたが、進化の観点からDMNを捉えるという今回の記事はとてもワクワクする内容だったのではないかと思います。

人類の脳に備わっているDMNという機能を上手に活かすと、今後の生活がより創造性やひらめきに溢れるものになるかもしれませんね!

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