ながら瞑想で集中力を高める!やり方や習慣化のコツを詳しく解説
ストレス軽減やリラックス効果が、科学的に証明されている「マインドフルネス瞑想」。興味はあるけれど、うまくできないと感じている人や、忙しくてなかなか時間が取れない人におすすめなのが「ながら瞑想」です。
料理や入浴中、寝る前など日々の生活にすぐ取り入れられるマインドフルネス瞑想の一つで、ヨガウェアに着替えたり、マットの上であぐらをかいたりする必要はありません。1日5〜10分の短い時間でも、集中力アップやリフレッシュ効果などを実感できます。
今回はMELONインストラクターの林有加里さん監修のもと、誰でも始められるながら瞑想の種類や詳しいやり方、効果をわかりやすく紹介します。
ながら瞑想とは
ながら瞑想は、日常生活で行う特定の対象に意図的に注意を向ける「集中瞑想」に分類されます。マサチューセッツ大学医学部名誉教授のジョン・カバットジン氏の著書『マインドフルネス・ストレス低減法』で紹介された瞑想方法がもとになっています。
例えば、スマートフォンやテレビを見ながら食事をして、気づいたらほとんど食べ終わっていたことはありませんか。
それは、体がオートパイロット状態(自動操縦)で、意識をせずとも食事を取れる状況であった証拠です。一方で、食べることに意識が向いておらず、思考が散漫になっていたともいえます。
ながら瞑想では集中力を高める練習として、口に入れた食事の味、食材の歯ごたえ、歯と歯が当たる音などに意識を向けます。もし別の考えが浮かんできたら、もう一度「食べる」という行為に意識を向け直し、目の前の行為に集中するトレーニングを行います。
ながら瞑想はマインドフルネス瞑想の一つ
マインドフルネス瞑想には、「フォーマルな実践」と「インフォーマルな実践」があります。
フォーマル | 特定の時間を作って行うトレーニング。例えば、静坐瞑想、ボディスキャン、ヨガなど |
インフォーマル | 日常の中に気づきを入れるトレーニング。食事をゆっくり味わう、歯を1本1本丁寧に磨く、自然の音に耳を澄ませるなど |
マインドフルネス瞑想の効果を実感するには、フォーマルとインフォーマルのどちらの練習も大切です。
ながら瞑想は、まさにインフォーマルな実践で、普段の行動の中で集中力を高めたり、リラックスできたり、マインドフルネスを実践することができるのです。
より具体的なマインドフルネス瞑想のやり方はこちらの記事をご覧ください。
ながら瞑想は「行っている行為に集中」すること
文字のまま理解すると、ながら瞑想は「〇〇しながら行う瞑想」と勘違いしてしまいがちですが、ニュアンスは若干異なります。
正しくは「〇〇しながらその行為に集中する瞑想」をイメージすると、より理解がしやすくなるでしょう。
実は、私たちの脳は2つのことに同時に集中する構造にはなっていません。「マルチタスク」という言葉は、同時進行で何かを行っているのではなく、「シングルタスク」を切り替えながら行っている行為です。
マルチタスクに関する複数の研究によって、シングルタスクの方が良いパフォーマンスを発揮する傾向にあり、マルチタスクはシングルタスクよりも40%効率が悪いと明らかになっています。
出典 : Multitasking: Switching costs|American Psychological Association
つまり、ながら瞑想で集中する練習を行うことで、目の前のことに集中する力が養われていくのです。
ながら瞑想の効果
ながら瞑想を行うと、どのような効果を感じられるのでしょうか。
頭がすっきりして脳の疲れが取れる
ながら瞑想を行った直後は、頭の中がすっきりして脳の疲れが取れたと感じやすくなります。これは脳が過剰に活動している状態を、集中瞑想によって抑える効果があるからです。
頭の中に過去の後悔や未来への不安など、さまざまなネガティブな感情が浮かんでいるとき、私たちの脳は過剰に活動している状態に陥っています。この状態はDMN(デフォルトモードネットワーク)と呼ばれます。
集中瞑想で目の前のことにピントを合わせることで、雑念が少なくなり、DMNによる脳のエネルギー消費が抑えられます。それにより脳が休まるというメカニズムによって、頭がすっきりしたと感じられるのです。
詳しくは「DMN(デフォルトモードネットワーク)の活動は『マインドフルネス』で抑制できる」をご覧ください。
ストレスが軽減する
ながら瞑想を習慣化させることで、目の前のことに集中する癖がつくようになり、ストレスの原因と離れる時間が増えます。
反芻思考で繰り返し考えていた考えを切り離すことができるようになるので、ストレスの軽減を感じる人もいます。
ただし、ながら瞑想で感じられるストレス軽減は、マインドフルネス瞑想全体の効果と比較すると一部的なもの。ストレス耐性やアンガーマネジメントなどの効果を感じるには、フォーマルな練習で観察瞑想と組み合わせましょう。
反芻思考の詳しい解説はこちらの記事でご確認ください。
観察瞑想に必要な集中力が高まる
集中瞑想であるながら瞑想によって、集中力がアップします。それにより、自分の心や体を観察する観察瞑想に必要な集中力が備わります。
特に、見よう見まねでマインドフルネス瞑想に挑戦したけれど、うまくいかなかったという人は違いを実感しやすいでしょう。
マインドフルネス瞑想のフォーマルな練習は、理論や方法を理解するのに一定の時間がかかるため、最初は「うまくできない」と感じる人が少なからずいます。まずながら瞑想から入ることで、観察瞑想に必要な集中力を鍛え、観察瞑想の基盤を整えます。
ながら瞑想の種類とやり方
それでは、日常生活に取り入れやすいながら瞑想の具体的なやり方をご紹介します。
どのながら瞑想でも、「目の前の行為に意識を向ける」「考えが浮かんだら、再度意識を向け直す」の2点を意識して行いましょう。
筋トレ瞑想
「筋トレ瞑想」には、体と心の両方をケアできるメリットがあります。筋トレ瞑想は、他のながら瞑想よりも長い時間を費やせるため、効果をより感じられるでしょう。
- 筋トレの種目は何でもOKです。
- 体の感覚に意識を向けます。
- いつもよりゆっくりとした動作でトレーニングをしていきます。体を動かしながら「どこに力が入っているか」「どんな疲労感が出てくるのか」「それがどう変化していくのか」などを感じてみましょう。
- 筋トレを数回繰り返し、動作を終えた後も「呼吸や鼓動の速さ」や「疲労感の変化」を感じ続けます。
慣れてきたらトレーニングを通常のスピードにしてもOKです。思考が浮かんだら、そのことにも気づき、もう一度体の感覚に意識を戻します。
料理瞑想
毎日、何気なくやっている「お米研ぎ」を少しだけ丁寧にやってみるだけで、ながら瞑想になります。
- ボールにお米を入れて、手で触りながら、色や形、温度、触感を楽しみます。
- 次に、水を入れて丁寧にお米を研ぎます。「水の温度」や「お米同士がこすれ合う音」「水が白くなる様子」などを楽しみながら何度か水を変えていきましょう。
- 次に、お米を炊きます。「炊き上がるまでに聞こえてくる音」や「湯気」「香り」を楽しみましょう。
お米研ぎ以外にも、炒め物や揚げ物などでもながら瞑想は行えます。
ティータイム瞑想
仕事の合間や朝のルーティンとして取り入れやすいのが、ティータイム瞑想です。
- ティーポットと砂時計を用意します。
- 茶葉の「香り」や「見た目」を楽しみながらポットに入れて、沸かしたお湯を注ぎましょう。
- 砂時計をセットして、3分間ただ砂が流れ落ちてゆく様子を眺めてください。
- 紅茶をカップに注ぎ、色や香りを楽しみます。ミルクを入れるときは、紅茶とミルクが混ざり合う瞬間の美しさも楽しみましょう。
- 色、香り、味わい、温度、五感を使って、楽しみながら紅茶を味わいます。
シャンプー瞑想
頭を使った日は、緊張から頭皮が硬くなります。そんなときは、マッサージも兼ねて「シャンプー瞑想」がおすすめです。
頭もすっきりし、頭皮の血流がよくなることで安眠効果も期待できますよ。
- 髪をブラッシングした後、シャワーで髪全体を濡らします。
- お気に入りの香りのシャンプーを適量手のひらにとり、泡立てましょう。
- 頭皮を丁寧にマッサージするようにシャンプーをしてください。頭皮や髪の手触り、泡立ち、香りなどを楽しみながら、リズミカルに手を動かしましょう。
- 最後に泡を流していきます。頭皮にあたる「シャワーの温度」「髪の手触り」「顔に伝わってくるお湯の感触」などを感じながら泡を流しましょう。
ハンドクリーム瞑想
手にハンドクリームを塗ることも、集中の練習になります。
- お気に入りの香りのハンドクリームを用意し、適量を手のひらにのせます。
- 全体に馴染ませてから、手を顔に近づけて、2呼吸ほど香りを嗅ぎましょう。
- 右手の親指、人差し指、中指、と順番に丁寧にハンドマッサージするようにクリームを伸ばしていきます。
- 最後に、手のひらで顔を覆うように近づけて、目を閉じて3呼吸ほど香りを嗅いでみてください。
- 目を閉じたまま、手を楽なところに下ろし、1分ほど自然な呼吸を感じましょう。
マッサージ瞑想
自分一人では習慣化しづらいという人には、家族やパートナーと一緒に行う「マッサージ瞑想」はいかがでしょうか。
- お互い楽な体勢になりましょう。
- パートナーに「体のどこが疲れているか」「触れてほしくないところがあるか」を尋ねます。
- マッサージする人の手が冷たいようであれば、手を擦って温めましょう。
- 「上手にやろう」とか「褒められたい」「機嫌を取りたい」などの想いを手放して、パートナーの体にそっと触れます。ただ純粋に「相手が楽になりますように」と想いを込めてください。
- ただ手を当てているだけでも大丈夫ですし、なでたりもんだりしても構いません。パートナーの身体と反応を感じていきます。相手の力が抜けて、お互いに心地よさが生まれていればうまくできている証拠です。
手洗い瞑想
手洗い瞑想は、トイレの後や外出先から戻ったタイミングなど、職場や家庭で簡単に取り入れられます。
- お気に入りの匂いの石鹸を適量、手のひらに取り泡立てます。
- 左右どちらかの手を選び、甲、手首、小指〜親指、手のひら、爪の間を洗います。やりやすい順番で問題ありません。
- いつもよりゆっくりした動きを意識しながら、洗っている部位を「右手の甲」「左手の人差し指」などと頭の中で1度唱えましょう。手の感覚、肌の温度、骨の形などもよく観察し、意識を向けます。
- もう片方も同じように行います。
- 水またはぬるま湯で泡を洗い流します。このときも、水の温度、石鹸の香り、水の音に意識を向けます。
どんなことでもながら瞑想にできる
勘のいい方は、生活のさまざまな行為をながら瞑想として活用できることに気がついたかもしれません。ピンとくるながら瞑想がなかった人は、自分がいつも行う行為と組み合わせられないか考えてみましょう。
他にもいくつかアイデアを紹介します。
歯磨き瞑想
歯ブラシを歯に当てながら、歯の一本一本、歯と歯茎の感覚、歯磨き粉の味を感じます。練習を続けると、歯があるから美味しく食べられることに気がつくでしょう。
いつもは時間がなくてぱっと済ませている人でも、はみがき瞑想を取り入れることで磨き残しも減り、口内健康の維持にもつながります。
通勤瞑想
仕事の前の通勤時間にも、ながら瞑想を取り入れてみましょう。
揺れに合わせてお尻や足が踏ん張ったり対応するからだの感覚、バスや車の振動など、いつも憂鬱な通勤時間にながら瞑想を取り入れることで、思ったよりも時間が早く過ぎると感じるかもしれません。
自分と同じように頑張って通勤している人に同志のような気持ちが生まれたり、ここにいる人たちが社会を作ってくれているという感謝が芽生えるかもしれません。
寝ながら瞑想
ボディスキャン瞑想はフォーマルな瞑想の一つで、習得までには少し時間がかかります。そこで、寝る前の寝ながら瞑想をおすすめします。
方法は簡単。ただ布団に寝転がって、呼吸を感じ、胸やおなか、体が膨らんだり萎んだりする感覚を感じます。背中の接地面の感覚や温度、肌が布団やタオルケットに触れる感覚、体が緩んでいく感覚も感じ取りましょう。
ボディスキャン瞑想とは違いガイドがなくてもできるため、そのまま寝てしまってもいいでしょう。
寝ながら瞑想のやり方は、こちらの記事でも詳しく解説しています。
その他のながら瞑想も、こちらの記事でもご紹介しています。ぜひ自分に合ったながら瞑想を見つけてくださいね。
・『食べる瞑想(マインドフルイーティング)』のやり方とは?ダイエット効果や血糖値を下げる効果も!
・『歩行瞑想』のやり方とは?効果やコツを解説!瞑想は歩きながらでもできる
ながら瞑想を習慣化させるコツ3つ
ながら瞑想を習慣化させるには、次の3つのポイントを押さえましょう。1日5〜10分でも、続けることが何より大切です。
(1)頭に浮かんだ考えを受け入れる
人間は、1日に6万回もの思考が頭の中をよぎるといわれています。さらに、勝手に頭に浮かんでくる「自動思考」は自分では止めることができません。
ながら瞑想の継続で、最初のハードルになるのが「考えが浮かんで全然集中できない……」という感覚です。
そこで役立つのが、「自動思考に気づく」こと。浮かんだ考えをうまく扱うようになるには、「自動思考に気づき、受け入れる」というプロセスが重要です。
ながら瞑想中に考えが浮かんだことに気がついたら、「良い悪い」とジャッジせずにただ「浮かんだな、よし戻ろう」と再度集中をし直します。習得までに少し時間はかかるかもしれませんが、1日5〜10分でも毎日ながら瞑想を行えば、どんどん集中力がアップし、より継続しやすくなっていくでしょう。
自動思考に興味を持ったら、詳しく解説しているこちらの記事をぜひご覧ください。
(2)自分に合った方法を見つける
ながら瞑想は、ほとんどの日常生活と組み合わせることが可能です。ただし、継続させるには自分に合った方法を見つけるのが不可欠です。
うまくいかなくても諦めないで、ぜひいくつか試してみてください。もちろん、複数のながら瞑想を継続するのもおすすめです。
(3)決まった時間と場所で実践する
ながら瞑想を習慣化させるためには、決まった時間や場所を決めるとより継続がしやすくなります。
例えばトイレの後に行う、お風呂で行うなどをルールにしておけば、やり忘れることも減っていきます。
【体験談】初心者がながら瞑想を続ける秘訣とは?
ここまで読んでいただいて、「そうは言っても、ながら瞑想って私でもできるようになるかな……」と、不安に感じている方は多いのではないでしょうか。著者自身、そう思っていた一人です。
座って行う瞑想にチャレンジしたことは何度もあるけれど、いろんな考えが頭に浮かんできてしまっていつも断念。日課の散歩でも、過去や未来の出来事をひたすら思い出し、帰宅する頃にはぐったりが定番でした。
瞑想がいつも中断してしまう悩みをゆかり先生に相談したところ、
・考えが浮かんでも嫌がらず、いい悪いと判断せず受け入れること
・自分に何が合っているかいろいろ挑戦してみること
というアドバイスをもらいました。
そこで犬の散歩をしながら、オリジナルの「お散歩瞑想」を早速実践してみました。犬の足音や鳥の鳴き声に意識を向けながら、歩き始めて5分であくびが出てリラックスしているのを実感。体が緩んでいく感覚がありました。
徐々に風や葉っぱの擦れ合う音が心地よく聞こえるようになり、帰るころには頭がすっきり。時々、思考が散漫になってしまいましたが、「集中が逸れたからもう一度集中しよう」と思うことで、以前と比較してぐんと集中できる時間が増えました。
さらに、座って行う瞑想よりもさまざまな刺激があるので再度集中しやすかったです。
できないと諦めるのではなく、自分に合っている方法を探し、短時間でも生活に取り入れることが、初心者でもながら瞑想を続ける秘訣だと実感しています。
ながら瞑想でよくある質問
最後に、ながら瞑想でよくあるお悩みや質問をご紹介します。うまくできないと感じている人は、ぜひ参考にしてくださいね。
ながら瞑想が向かないケースはありますか?
運転中や刃物を使う料理中でも、ながら瞑想を行って問題はありません。
交通事故の原因として「考え事をしていた」と、漫然運転がよく理由に上がります。一方で、目の前の行為に集中するながら瞑想で、危険度が高まる可能性は低いでしょう。
ただし、運転中や刃物を使う場合は、体の感覚ではなく、視界に入ってくる情報に注意を向けましょう。
座る瞑想がうまくいかない人でもながら瞑想は続けられますか?
座る瞑想が苦手な人こそ、まずはながら瞑想をおすすめします。
座る瞑想は動きがないため、高い集中力が必要です。ながら瞑想は、匂いや体の感覚、音など、外部からの刺激がたくさんあるので、思考が浮かんできても、再度集中しやすいです。
集中力を鍛えてから、フォーマルな練習に再度チャレンジすると、違った感触を掴めるかもしれません。
まとめ|ながら瞑想は集中力を高めるトレーニング
今回は、ながら瞑想の効果や詳しいやり方を解説しました。
ながら瞑想は、集中力を高めるトレーニングとして有効です。目の前のことに集中し、ストレスから切り離される時間を持つことで、頭がすっきりしてストレス軽減を実感できるでしょう。
なかなかうまくいかない人でもご安心ください。「MELON オンライン」では、マインドフルネスクラスを好きな時間に、好きな場所で受けられます。マインドフルネス瞑想の基本を、一般社団法人マインドフルネス瞑想協会の資格を持つプロのインストラクターから学ぶことで、正しい瞑想方法が身につきます。
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