マインドフルネス瞑想の効果5選!最新の研究をもとに解説
睡眠の質向上やストレスの軽減、ビジネススキルの向上までさまざまな効果があるといわれているマインドフルネス。
しかし、なかなかイメージがしづらかったり、習得に時間がかかったりするため、
「どのような効果があるの?」
「効果は実証されているの?」
「やってみたけど効果を感じない」
などと感じている方も多いのではないでしょうか。
そこで今回は、科学的に実証されたマインドフルネスの効果を研究に基づいて解説します。
さらに、初心者でも効果を感じやすい実践法や、効果を感じられるまで継続するコツなども紹介するので、これまでなかなか効果が感じられなかった方もぜひ実践してみてください。
そもそもマインドフルネスとは何なのかについてはこちらの記事で詳しく解説しています。
マインドフルネス瞑想の特に注目したい5つの効果|研究をもとに解説
マインドフルネス瞑想には、科学的に裏付けされた多くのメリットがあります。マルチタスクに追われ、疲労を溜めやすい現代人にうれしい効果を5つ紹介します。
(1)脳の構造が変化し、不安やストレスが軽減
継続的なマインドフルネス瞑想によって、ぐるぐると巡る不安や後悔などのネガティブな気持ちから脱しやすい状態になることで、不安やストレスが軽減します。
人間はぼーっとしていると、自然に考えが浮かび始めます。これはデフォルトモードネットワーク (DMN)と呼ばれる脳の活動によるものです。不安やネガティブな思考から抜け出せず苦しい場合、DMNが過剰に活動し、反すう思考に陥っている可能性があります。
DMNの状態のときに活動しているのが脳の「後部帯状回」や「内側前頭前野」です。瞑想をしている人は、これらの部位の活性が低く、ネガティブな思考から脱して「今ここ」に集中しやすい状態になります。
また、瞑想を続けることで、脳の「島」と呼ばれる部位が厚くなります。島はハッと気づくときに働く部位です。
島が分厚いとDMNに陥っている状態に気づき、抜け出すことができます。一方、うつ病の人は島の面積が小さいことがわかっています。島が小さいことでDMNに陥っている状態に気づけずに、ネガティブな考えから抜け出せなくなってしまうと考えられています。
瞑想を継続することで、DMNの過剰な活動を抑制し、逆にDMNの状態から脱する機能を強化します。これにより、不安やそれに伴うストレスの軽減が期待できます。
瞑想中に脳にどのような変化が起きているのかについては、こちらの記事で詳しく解説しています。
(2)不安障害やうつ病の治療
マインドフルネスは、不安障害やうつ病の治療効果があることが実証されており、医療現場で広く活用されています。
1970年代に「マインドフルネスストレス低減法 (MBSR)」が慢性疼痛の患者に対するストレス対処法として開発され、ここからマインドフルネスが医療に導入されるようになりました。
不安障害の治療において、MBSRは薬物治療と同等の治療効果があることが臨床試験で実証されました。また、不安障害を薬物で治療した群では78.6%の被験者から睡眠障害や吐き気などの有害事象が報告されたのに対し、MBSRを受けた群で有害事象を報告した被験者は15.4%で、MBSRによる治療は有害事象が起こりにくいという結果も得られています。
さらに1990年代に、MBSRと認知行動療法を組み合わせた「マインドフルネス認知療法 (MBCT)」が開発されました。MBCTでは、瞑想を通じて呼吸や体の感覚・思考・気分を観察し、自分の思考や気分に巻き込まれずに冷静に観察するスキルを養います。
うつ病に対するMBCTの有効性をはかる研究では、うつ病の症状がMBCTの前後で大幅に減少したことが実証されました。
参考:マインドフルネス認知療法(Mindfulness Based Cognitive Therapy)|慶応義塾大学 保健管理センター
参考:Elizabeth A Hogeら(2023).Mindfulness-Based Stress Reduction vs Escitalopram for the Treatment of Adults With Anxiety Disorders: A Randomized Clinical Trial. JAMA Psychiatry, 80, (1).
参考:Dirk E.M. Geurtsら(2020).The effectiveness of mindfulness-based cognitive therapy for major depressive disorder: evidence from routine outcome monitoring data. BJPsych Open, 6, (6).
不安障害に対するマインドフルネスの効果についてはこちらの記事で詳しく解説しています。
(3)集中力が向上し、ビジネススキルもアップ
マインドフルネス瞑想を継続することで、集中力が向上し、目の前のタスクに集中できるようになります。その結果、記憶力や注意力などのパフォーマンス全般が向上することが研究で示されています。
マインドフルネスが高ストレスの課題への取り組み方に与える影響を調査した研究によると、マインドフルネスを実践したグループは、一つの課題により長く集中し、疲労感も少ないことがわかりました。マルチタスクはシングルタスクよりも40%効率が悪いとされているため、一つの課題により長く集中できるようになることで、生産性の大幅な向上が期待できます。
さらに、マインドフルネスは記憶力、特にワーキングメモリの向上にも寄与します。ワーキングメモリとは、脳が情報を一時的に保持し操作する能力で、会話や問題解決など、より複雑なタスクを進める際に不可欠なものです。
マインドフルネスを実践することで、気を散らさずに「今ここ」に集中できるようになり、脳のリソースを目の前のタスクへの集中や、ワーキングメモリに割くことが可能になります。これにより、生産性や複雑な課題への対処能力が向上すると考えられています。
参考:David M. Levyら (2012). The effects of mindfulness meditation training on multitasking in a high-stress information environment. Graphics Interface.
参考:Multitasking: Switching costs|American Psychological Association
参考:Michael D. Mrazekら (2013). Mindfulness Training Improves Working Memory Capacity and GRE Performance While Reducing Mind Wandering. Sage Journals, 24, (5).
マインドフルネスは近年、Googleを始めとする大手企業に取り入れられています。取り入れられる理由や導入事例についてはこちらの記事で詳しく解説しています。
(4)睡眠の質改善
マインドフルネスには、睡眠の満足度を高める効果もあります。
研究によると、マインドフルネス瞑想を実践したグループは、実践していないグループと比較して、プログラム終了後だけでなく、5〜12か月以上経過した後も睡眠に対する満足感が持続していました。
これは、自律神経の乱れによって交感神経が過剰に働くと眠りが浅くなる一方、マインドフルネスが副交感神経を安定させる効果を持つためと考えられます。
参考:安部泰弘ら(1996).睡眠時における体動と自律神経活動の関係.テレビジョン学会技術報告,20巻,63号.
参考:宮崎伸一ら(2023).ヨーガ・マインドフルネス瞑想が心拍変動および心理状態に与える影響.中央大学保健体育研究所紀要,41号.
睡眠とマインドフルネスの関係についてはこちらの記事で詳しく解説しています。寝る前におすすめのマインドフルネス瞑想の方法も紹介しているので、睡眠に課題を感じている方はぜひ読んでみてください。
(5)感情のコントロール能力向上
マインドフルネスによって、脳の扁桃体の活動が抑制され、感情をコントロールしやすくなります。
扁桃体は、脳の側頭葉や海馬の近くに位置する部位です。マイナスな感情に関連しており、不安や恐怖を強く感じると、この部位が活性化することが知られています。
マサチューセッツ大学のマインドフルネスセンターで行われた8週間の「マインドフルネスストレス低減法(MBSR)」プログラムでは、被験者の脳構造の変化が調査されました。調査の結果、瞑想を実践したグループでは、扁桃体の灰白質(かいはくしつ)密度が低下し、これがストレス軽減と相関していることが明らかになっています。
マインドフルネスによって扁桃体の活動が抑制され感情に振り回されることが少なくなる結果、ストレスの軽減にもつながったと考えられます。
参考:Eight weeks to a better brain|The Harvard Gazette
感情が抑えられない方は「扁桃体ハイジャック」状態に陥っているのかもしれません。扁桃腺ハイジャックとは何かや、その対処法についてはこちらの記事で詳しく解説しています。
マインドフルネスの効果が出るまでの期間は?
「マインドフルネス瞑想を始めたけれど、どれくらい続ければ効果が出るのだろう……」とお悩みの方も多いのではないでしょうか。
ここからは、マインドフルネス瞑想の短期的な効果から中長期的な効果までを紹介します。
早い人は1度でも効果を感じられる
マインドフルネスの効果は、早い人であれば1度の実践で感じられることもあります。1週間以内に感じられる短期的な効果は以下の通りです。
- 脳の不要な活動(エネルギー消費)を抑制して脳疲労を軽減
- 脳疲労の軽減によって、体の疲労感も改善
- ネガティブな思考が抑制されてストレスが減少
さらに、40〜60分の中強度(息がはずみ、汗ばむ程度)の運動を1度行うだけで、憂鬱な気分の緩和や、反すう思考を止める効果があることが実証されています。そのため歩行瞑想や筋トレ瞑想などの運動を取り入れたマインドフルネス瞑想を実践することで、早く効果を感じられる可能性が高まります。
参考:Serge Brandら (2018). Acute Bouts of Exercising Improved Mood, Rumination and Social Interaction in Inpatients With Mental Disorders. Frontiers in Psychology.
2か月の間に少しづつ効果が出ると研究によって実証
前述のとおり、マインドフルネス瞑想の効果を1度の実践で感じられる人もいますが、研究によれば、2か月の間に徐々に確かな効果が現れるとされています。
オックスフォード大学の研究では、再発性うつ病の病歴を持つ104名の患者を対象に、「マインドフルネスマインドフルネス認知療法(MBCT)」の8週間プログラムを実施し、反すうや不安の変化を調査しました。
その結果、全体的な傾向として反すうや不安が減少したことが確認されました。しかし、個々の結果を見てみると、急激に状況が改善するわけではなく、時には以前の状態に戻ることもありながらも、徐々に効果が現れることがわかりました。
この研究からもわかるように、すぐに効果を感じられなくても挫折せず、毎日5分でもいいので継続することが大切です。
参考:Ietsugu Tetsujiら(2014). Gradually getting better: Trajectories of change in rumination and anxious worry in mindfulness-based cognitive therapy for prevention of relapse to recurrent depression. Mindfulness,6.
こちらの記事では前述の「筋トレ瞑想」を含む、5〜10分でできる「ながら瞑想」の実践方法を紹介しています。日常に取り入れやすいものなので、習慣化するのが難しいと感じる方にもおすすめです。
5〜10分でできる!効果を感じられる基本のマインドフルネス瞑想【動画】
ここでは、初心者でも短時間で気軽に行える基本のマインドフルネス瞑想を紹介します。慣れないうちは5〜10分くらいを目安に行い、慣れてきたら実践時間を増やしていきましょう。
初めてであれば、動画を視聴しながらインストラクターの誘導に従って実践していただくといいでしょう。動画を視聴できない場合は、以下のやり方を参考にしてください。
STEP1:楽な姿勢で座り身体の位置を微調整する
まず楽な姿勢で座り、左右の坐骨に均等に体重をのせて骨盤を安定させます。その後、ゆっくりと気持ちよく背骨を伸ばしていきましょう。
STEP2:自然な呼吸に意識を向ける
次に呼吸に意識を向けます。呼吸はコントロールしようとせずに、身体の中から沸き起こってくる「ありのままの呼吸」を行いましょう。
基本的には鼻呼吸ですが、辛ければ口呼吸でも大丈夫です。
「鼻先に空気が出入りする感覚」「お腹や胸が膨らんでへこむ感覚」「身体が床についている感覚」など、呼吸をすることによって生じる身体の感覚に意識を向けましょう。
STEP3:思いや考えが浮かんできたら、そっと呼吸に意識を戻す
しばらく呼吸に意識を向けていると、思いや考えが浮かんでくることもあるでしょう。
しかし、思いや考えが浮かんできても大丈夫です。「今、〇〇のことを考えていたな」と気づいて、そっと呼吸に意識を戻しましょう。
この一連の流れを数分間続けます。
「正しい方法がわからずなかなか効果を感じられない」「一人でやると継続できない」という方でもご安心ください。「MELON オンライン」では、マインドフルネスクラスを好きな時間に、好きな場所で受けられます。
マインドフルネス瞑想の基本を、一般社団法人マインドフルネス瞑想協会の資格を持つプロのインストラクターから学ぶことで、正しい瞑想方法が身につきます。
紹介した「基本のマインドフルネス瞑想」をはじめ、300以上のクラスがいつでもどこでも受けられるので、自分に合った瞑想法が見つかります。また、リアルタイムのクラスでは、その場で疑問点をインストラクターに確認できるため効果を感じやすくなります。
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初心者でも効果を感じやすいマインドフルネスの実践方法
始めたばかりだと集中力が続かず苦しく感じたり、効果を実感しにくいことがあります。
ここでは、座る瞑想がうまくいかなかった方向けのマインドフルネスの実践方法を紹介します。
ここで紹介する方法以外にも、マインドフルネスの実践方法はさまざまあります。こちらの記事では、初心者でも簡単にできるマインドフルネスのやり方を紹介しているので自分に合った瞑想法を探してみてください。
マインドフル・イーティング
マインドフル・イーティングとは、「食べる瞑想」とも呼ばれるマインドフルネス瞑想の一つで、食材一つ一つの「色」や「形」「香り」「食感」「味」「喉ごし」などに丁寧に意識を向けながら、マインドフルに食事を行うことです。
五感をフルに活用して食事を味わうことで、脳が「食べた」と認識し、少ない量でも満足感を得ることができます。その結果、過食を防ぎ、ダイエットにも効果的です。
マインドフル・イーティングの効果ややり方については、こちらの記事で詳しく解説しています。
ジャーナリング
ジャーナリングとは、「書く瞑想」として知られる瞑想法の一つで、頭に浮かんだことをそのまま紙に書き出すことで、自分の状態を理解し、ストレス軽減やメンタルヘルスの向上を図る手法です。
思考を整理して書き出すことで、思考の癖が可視化され、自分が陥りやすい思考パターンに気づくことができます。その結果、自分がネガティブになっていることに早めに気づいて対処できるようになり、感情に振り回されることが少なくなります。
ジャーナリングの効果ややり方については、こちらの記事で詳しく解説しています。
歩行瞑想
歩行瞑想とは、マインドフルネス瞑想の一種で、その名の通り歩きながら行う瞑想法です。マインドフルウォーキングとも呼ばれ、足裏の感覚に注意を向けながら、丁寧に観察しつつ歩きます。
歩行瞑想には不安やストレスの減少、うつ病の軽減効果があります。さらに有酸素運動としての効果も期待できるため、心身の健康を同時にサポートします。
日常生活に取り入れやすく、瞑想のための時間を設けるのが難しい方にもおすすめです。
歩行瞑想の効果ややり方については、こちらの記事で詳しく解説しています。
マインドフルネスの効果に関するよくある質問
最後にマインドフルネスの効果についてよくある質問と回答を紹介します。
効果を感じるまで継続するコツは?
マインドフルネスの効果をなかなか実感できず挫折しそうなときは、マインドフルネスを日常生活に取り入れることをおすすめします。例えば、以下のように日常の活動をマインドフルに行うことができます。
- 家事をしながらの瞑想:食器を洗うときに水が手に当たる感覚に集中し、お皿の肌触りを感じる
- 朝のコーヒータイム:コーヒーの香り、温度、味に意識を向ける
このように、日常のさまざまな瞬間にマインドフルネス瞑想を取り入れることで、無理なく継続ができるでしょう。
マインドフルネスや瞑想を習慣化するのが難しい理由や習慣化するコツについて、こちらの記事でさらに詳しく解説しています。
効果を感じやすい時間帯は?
マインドフルネス瞑想には、「この時間にすべき」といったルールはありません。自分がやりやすい時間に行って継続することが大切です。
ただし、時間帯で得やすい効果が変わるので各時間帯で得やすい効果を紹介します。
効果が感じにくい人ややってはいけない人は?
マインドフルネス瞑想は基本的には安全です。しかし、実践方法によっては思考や気持ちを観察するプロセスがあるため、嫌なことやトラウマを思い出し、精神的に不安定になったり、不安が強くなったりする場合があります。
特に、重篤な精神疾患を抱えている方や強いトラウマやPTSDを持つ方、またマインドフルネスを実践すると不安が強くなる方は、医師と相談のうえ実践するようにしてください。
マインドフルネスを実践するにあたって注意しなくてはならない人については、こちらの記事で詳しく説明しています。心配な方はご一読ください。
まとめ|マインドフルネスを継続して効果を実感しよう
今回は、マインドフルネス瞑想の効果や、効果を感じやすい実践方法、効果を感じるまで継続するコツを紹介しました。
マインドフルネス瞑想には心身の健康にうれしい効果がたくさんあります。今回紹介した実践方法や継続するコツを取り入れて、前向きで幸せな自分に出会いましょう。