怒りを抑える方法とは?イライラの原因やすぐできる対処法を紹介
「ついカッとなって怒りが抑えられない……」
「前よりもイライラしやすくなった」
など、イライラや怒りに任せて行動し、後悔した経験がある人も多いのではないでしょうか。
怒りやイライラは、ただ我慢しようと思って消えるものではありません。その原因をしっかり理解し、適切な対処法を知ることが大切です。それにより、怒りを抑える方法が身につき、毎日を穏やかに過ごせるようになります。
今回は、公認心理師・精神保健福祉士の資格を持つMELONインストラクターのNaoさんへのインタビューをもとに、イライラしやすくなる原因を解説した上で、すぐに実践できる怒りを抑える方法を紹介します。
イライラしやすくなる原因とは?
ここではイライラしやすくなる原因を3つ紹介します。思い当たるものがないかチェックしてみましょう。
不安やストレスが溜まっている
イライラしやすくなった原因として、不安やストレスが溜まっていることが考えられます。
不安やストレスといっても人それぞれ原因が異なりますが、例えば、人間関係の悩み・介護・子育て・睡眠不足・疲労などが挙げられます。
不安やストレスが蓄積されるとイライラしやすくなったり、怒りを感じやすくなったりするため注意が必要です。イライラしやすくなったら「無理をしていないかな?」と立ち止まって考えてみてください。
こちらの記事では不安を和らげる方法を紹介しているので、不安を感じやすい方は参考にしてみてください。
精神的な不調
考えられる原因の2つ目は、精神的な不調です。
精神的な不調を抱えていると、怒りやさまざまな感情のコントロールが難しくなる場合があります。
例えば不安障害やうつ病・双極性障害などの精神疾患を抱えている場合、扁桃体などの脳内の感情をコントロールする領域に影響が出ることで、感情のコントロールが難しくなるといわれています。
参考:感情の中枢である扁桃体におけるドーパミンの役割を解明|国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構
PMS(月経前症候群)
生理前になるとイライラしやすくなる症状が出ることがありますが、これにはホルモンの変動が関わっていると考えられています。
月経前は自律神経を活発にし気持ちを安定させてくれる「エストロゲン」というホルモンが減少し、代わりに抑うつ状態を作りやすくする「プロゲステロン」というホルモンが増加するため、イライラしたり落ち込みやすくなる症状が現れることがあります。
このような症状をPMS(月経前症候群)といいますが、身体にも、浮腫みや疲れやすさなど、さまざまな症状が現れやすくなるため、無理せず自分を労ってあげましょう。
また、症状には個人差もあるのでつらい場合は我慢せず医療機関に相談してみてください。
参考:高岡素子ら(2021). 月経前症候群と性周期における性ホルモンとの関係. 女性学評論 , 35号.
イライラしやすい人・怒りやすい人の特徴
ここでは、イライラしやすい人や怒りやすい人の特徴を解説します。
自己肯定感が低い
自己肯定感の低さも怒りやイライラの原因となる可能性があります。
自己肯定感が低いと自分の価値に自信を持てず不安を感じやすいため、ちょっとしたことでイライラしてしまったり、周囲に怒りを示して自分の価値を守ろうとしてしまったりします。
例えばちょっとしたアドバイスを貰っても、「私はダメだっていうこと?」と過剰に不安になり、自分の価値を否定されたような気がしてイライラしてしまうことがあります。
感情に飲み込まれやすい
感情に対して冷静に反応できず、飲み込まれやすい人も怒りやすくなります。
怒りは二次感情といわれており、怒りの感情の奥には、「悲しい・つらい・悔しい・不安・苦しい」などの一次感情が存在し、その感情に気づけないと怒りに飲み込まれてしまうといわれています。
例えば、友達にメッセージを送ったのに返事が返ってこないとき、まず、「嫌われちゃったんだ」という悲しみを感じたとします。
しかし、その悲しみに気づけないと、「なんで返ってこないの?」と怒りに飲み込まれてしまうのです。
「こうあるべき」という思考が強い
イライラしやすい、怒りやすい人の特徴として「こうあるべきという思考が強い」ことも挙げられます。
「こうあるべき」という思考が強い人は、何事も0か100でしか考えられず「これはこうあるべきだ」「こうするのは当たり前だ」と決めつけてしまい、高い理想を持つ傾向があります。
その結果、期待値が高すぎるため現実とのギャップが生じやすくなり、イライラや怒りを感じてしまいます。
怒りをコントロールする方法であるアンガーマネジメントについて解説している記事でも、人によって異なる「〇〇するべき」という思考を認識する方法を紹介しています。
今すぐ実践できる!4つの怒りを抑える方法
ここでは、怒りを感じたときにすぐ実践できる怒りを抑える方法を4つ紹介します。
(1)ゆっくり呼吸する
ゆっくり呼吸をするだけでもイライラや怒りを抑えられます。
イライラや怒りを感じているときは、基本的に交感神経が優位になっているため、ゆっくり呼吸を行い副交感神経を優位にしてあげることが大切です。
呼吸をする際は、できるだけ吐く息を長くしてみましょう。鼻から細く長い息を吐き出して、息を吐ききったらまた呼吸を繰り返します。
ゆっくり呼吸をするだけでも、イライラや怒りは少しずつ静まっていきます。
以下の記事では、呼吸法について詳しく紹介しているので、ぜひ参考にしてください。
(2)イライラや怒りを感じたら6秒間やり過ごす
イライラや怒りを感じたら6秒間やり過ごすのも対処法の一つです。
怒りの感情のピークは、だいたい6秒間といわれており、6秒過ぎると、徐々に怒りの感情は鎮まっていきます。
そのため、イライラや怒りを感じたときは、まずは心の中で6秒数えてみましょう。怒りのピークが過ぎれば冷静な判断がしやすくなります。
(3)落ち着ける言葉を心の中で唱える
自分が落ち着ける言葉を心の中で唱えるのも有効です。
まずは自分の怒りが和らぐような言葉を考えてみましょう。例えば、「大丈夫」「自分は穏やか」「明日には忘れる」など、自分が落ち着けそうな言葉であれば何でも構いません。
イライラや怒りを感じたときに、これらの言葉を心の中で唱えてみるだけでも、ふっと怒りが和らぎます。
(4)落ち着ける行動をとる
怒りを感じたら自分が落ち着ける行動をとってみるのもいいでしょう。
普段の生活で、「これをしていると気分が落ち着くなあ」ということを考えてみてください。
例えば、
- コーヒーやハーブティーを飲む
- 筋トレをする
- SNSで猫の動画をみる
- 読書をする
- アロマの香りを嗅ぐ
などがあります。いつでもどこでも実践可能なものだと怒りを感じたときにすぐ実践できます。
このように、自分が落ち着く行動を把握し、イライラや怒りを感じたときには行動してみましょう。
怒りを感じたときに「やってはいけない感情の抑え方」とは
前項では、イライラや怒りを抑える方法を解説しましたが、怒りを感じたときについやりがちな行動の中には逆効果になってしまうものもあるので紹介します。
感情を抑圧する
怒りを感じると、真面目な人ほど我慢しようとしてしまいます。
しかし、自然に湧いてくる感情を抑圧しようとしたり、なかったことにしようとしたりしても、消えることなくどんどん湧いて溜まってしまい、あるとき急に大きな怒りとなって爆発してしまうリスクがあります。
あとで、「あんなこと言わなければよかった」という後悔にもつながるので、やみくもに感情を抑圧したり我慢するのは避けましょう。
アクティングアウト
やってはいけない感情の抑え方の2つ目は、アクティングアウトです。
アクティングアウトとは、例えば暴飲暴食、衝動買いなど怒りの感情に任せて行動してしまうことです。
アクティングアウトによって一時的に気を紛らわせられるかもしれませんが、後々さらに怒りを強めてしまう場合があり、悪循環に陥ってしまう可能性があるので注意が必要です。
どうしても気を紛らわしたいときは、感情に身を任せるのではなく「今から〇〇をする!」と意識的に、時間を決めて行動するようにしましょう。
怒りを抑える方法としてマインドフルネスも効果的
怒りを抑える方法として、マインドフルネスも効果的です。
マインドフルネスとは「いま、この瞬間」に起こっている現象を、ありのままジャッジせず観察すること。ここでは、マインドフルネスと怒りの感情の関係について解説していきます。
マインドフルネスについてもっと詳しく知りたいという方は、以下の記事をご覧ください。
怒りを感じている自分にマインドフルネスで気づく
一般的に、怒りの感情は嫌なもの・感じたらいけないものと思われがちですが、必ずしも悪いものではなく、自分を守ったり、成長するきっかけになったりもするため欠かせない感情です。
例えば、危険な目に合ったときに自分を守ったり、壁に当たったときも「悔しいから頑張る!」と自分が成長するための起爆剤になったりもします。
このような認識を頭の片隅に置いておき、イライラや怒りを感じたら「怒りを感じている自分に気づいて認める」のが重要で、「今ここ」に意識を向ける練習をするマインドフルネスはこの助けになります。
マインドフルネスで怒りを客観的に観察する
怒りの感情に飲み込まれないようにするには、普段からマインドフルネスを実践して怒りをありのまま客観的に見る練習をするのがおすすめです。
怒りが発生したときに、「なぜ怒りが起こったのか」「怒りの奥にどういう感情があるのか」を観察してみると以下のようにさまざまな一次感情に気づけるかもしれません。
- 理不尽な扱いを受けた → 大切にされなかったという悲しい感情(一次感情) → 怒りの感情
- 恋人が待ち合わせに連絡なしで30分遅れてきた → 途中で事故に巻き込まれたのではないかという心配の感情(一次感情) → 怒りの感情
- 部下や後輩が同じ失敗を繰り返した → 何回も注意したのに覚えてもらえない虚しい感情(一次感情) → 怒りの感情
このように、怒りの前には必ず一次感情が存在します。
一次感情に気づくことができれば、「こう思ったから、怒りを感じたんだな」と自分の感情を冷静に見れるようになり、イライラや怒りが抑圧された結果溜まって爆発することも防げるでしょう。
以下の記事では、マインドフルネスの効果を脳科学の観点から詳しく解説しています。マインドフルネスの基本的なやり方についても、動画付きでわかりやすく解説しているので、ぜひ実践してみてください。
イライラや怒りを感じたときに、すぐにできるマインドフルネス瞑想を紹介
ここでは、初心者でも効果が実感しやすいマインドフルネス瞑想法を2つ紹介します。どちらもイライラや怒りを感じたときにすぐに実践できるので、ぜひ試してみてくださいね。
歩行瞑想
歩行瞑想とは、足裏の感覚に注意を向けて、丁寧に観察しながら歩く瞑想です。
実際に歩かなくてもその場で足踏みを繰り返して、足の裏にどんな感覚があるのかを観察するだけでもOKです。
やっている途中にも、イライラの怒りが沸いてくるかもしれませんが、それでも大丈夫。「イライラしているな、怒りの感情があるな」ということに気づいて、再度足の裏に意識を戻してください。
これを何度か繰り返すだけでも、怒りの感情は少しずつ鎮まっていきます。
歩行瞑想のさらに詳しいやり方や効果については、以下の記事をご覧ください。
食べる瞑想
食べる瞑想とは、丁寧に食事をするマインドフルネス瞑想です。食べ物の食感や味・香りなどに、丁寧に意識を向けながら食事を行います。
食べ物はなんでも大丈夫ですが、イライラや怒りを感じているときは、飴を舐めるのがおすすめです。飴を舐めているときの味や舌触りに、丁寧に意識を向けてみましょう。五感をしっかり使うことで怒りから「今ここにいる」という感覚にシフトできます。
以下の記事では、食べる瞑想のやり方や効果を詳しく解説しています。
まとめ|怒りへの対処法を活用してイライラから解放されよう
今回はイライラや怒りを感じる原因や、その対処法を紹介しました。
イライラや怒りを抑えるには、自分の状態や感情を客観的に観察するのが有効です。自己理解を深めることで、一次感情に気がつき怒りが爆発する前に対処できます。
怒りを客観的に捉えるのに有効なマインドフルネス瞑想や、紹介したテクニックを組み合わせて、怒りやイライラに支配されない穏やかな自分に出会いましょう。
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