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MBSRのやり方とその効果とは?マインドフルネス瞑想でストレスを軽減

MBSR

MBSR(マインドフルネスストレス低減法)に興味があるけれど、どのようなものかわからず一歩踏み出せない方も多いのではないでしょうか?

MBSRは、マインドフルネス瞑想を通じてストレスを軽減し、心身の健康を促進するためのプログラムで、受講することでストレスへの対処方法やポジティブな姿勢を身につけられます。

今回はMELONインストラクターでMBSRプログラムを修了した金田絵美さんへのインタビューをもとに、MBSRとは何かやその効果を解説した上で、始めるためのステップをお伝えします。


そもそもマインドフルネスとは何かを知りたい方はこちらの記事をご覧ください。

MBSR(マインドフルネスストレス低減法)とは?

ピンクの背景に青いクエスチョンマーク

MBSR(Mindfulness-Based Stress Reduction)とは、日本語で「マインドフルネスに基づくストレス低減法」と呼ばれる、8週間にわたって瞑想やヨガを実践するプログラムですストレスへの対処法を学び、より健康で幸せな人生を送れるようになることを目的としています。

元々は持病による慢性的な痛みに苦しむ人々の痛みを和らげるために開発されたものでしたが、現在では慢性的な疾患はないがストレスを感じている人々にも広く普及しています。

参考:春木 豊ら(2008).「マインドフルネスに基づくストレス低減プログラム」の健康心理学への応用.健康心理学研究, 21巻, 2号.

参考:ABOUT|Jon Kabat-Zinn

MBSRの歴史

元々仏教の修行の一部であったマインドフルネスを医療の分野に持ち込み、MBSRを確立したのがジョン・カバットジン博士です。彼は米国マサチューセッツ大学医学部の名誉教授であり、同大学のマインドフルネスセンターの創設者でもあります。

カバットジン博士は仏教瞑想やヨガを実践し効果を実感したことで、医療に転用できないかと考えその効果を科学的に実証し、1979年に最初のMBSRのクラスを開講しました。

なお、マインドフルネスの歴史については、「マインドフルネスの歴史とは?起源や創始者を解説!仏教との関係性も紹介」の記事で詳しく解説しています。

MBSR(マインドフルネスストレス低減法)の効果

椅子の上で目を閉じる女性

ここではMBSRがもたらす主な効果について研究を基に紹介します。

(1)痛みを軽減する

MBSRは元々腰痛や頭痛といった痛みへの対処法として生み出され、その効果は研究でも実証されています。

6か月以上の慢性的な痛みに苦しむ90名の患者を対象に、10週間のMBSRプログラムを提供した研究によって以下のような効果が認められました。

・痛みの程度の低下
・痛みによる活動の抑制減少
・抑うつや不安症状の改善

なお、これらの効果は15か月後の追跡調査でも維持されました。

参考:Kabat-Zinn, Jら(1985). The clinical use of mindfulness meditation for the self-regulation of chronic pain. Journal of Behavioral Medicine, 8, (2).

(2)ストレスを軽減する

元々疾患による疼痛に苦しむ人を対象にしていたMBSRですが、疾患を持たない人のメンタルヘルスも改善すると明らかになっています。

疾患を持たない人に対するMBSRの効果を調査した研究では、以下の4つの効果が認められました。

(1)ストレスの軽減
ストレスの軽減においては大幅な効果があった。

(2)不安の軽減
不安の軽減に対しても中程度の効果があった。

(3)憂鬱な気分の軽減
憂鬱な気分の軽減に対しても中程度の効果があった。

(4)生活の質の向上
生活の質の向上に対しても中程度の効果があった。

また、これらの効果は平均19週間の追跡調査でも維持されました。

参考:Bassam Khouryら (2015). Mindfulness-based stress reduction for healthy individuals: A meta-analysis. Journal of Psychosomatic Research, 78, (6).

(3)不安障害を改善する

不安障害を持つ成人276人を対象とした最新の研究では、MBSRによる8週間の治療が抗うつ薬エスシタロプラムと同等の効果があると実証されました。 

さらに、エスシタロプラムで治療した群では78.6%の被験者が吐き気や頭痛などの有害事象を報告したのに対し、MBSRで治療した群で有害事象を報告したのは15.4%でした。 

このように、MBSRは不安障害や気分障害などの精神疾患に効果があるうえ、薬物治療よりも安全であるといえます。

参考:Elizabeth A. Hogeら(2023). Mindfulness-Based Stress Reduction vs Escitalopram for the Treatment of Adults With Anxiety Disorders: A Randomized Clinical Trial. JAMA Psychiatry, 80, (1).


こちらの記事では、不安障害に対するマインドフルネスの効果を解説しています。また、不安感にお悩みの方に有効なマインドフルネス瞑想のやり方も解説しています。 

MBSR(マインドフルネスストレス低減法)の基本的な構成とプログラム内容

時計と本

ここからはMBSRに興味がある方に向けて、MBSRプログラムの中身やどこで受けられるかを紹介します。

MBSRのプログラム全体の概要(8週間のコース、セッションの内容)

MBSRのコースは、基本的に20〜30人程度のグループで8週間行われ、以下のとおり

・グループセッション
・リトリート
・ホームワーク

の3つの要素で構成されます。

(1)週1回のグループセッション

各セッションは約2.5時間で、

・マインドフルネス瞑想やヨガの実践
・マインドフルネスやストレスに関する講義
・グループディスカッション

などが含まれます。

(2)1日のリトリート

プログラムの中盤または終盤に、6時間程度かけて行う集中リトリートが行われ、学んできたさまざまなマインドフルネス瞑想を集中的に実践します。

(3)ホームワーク

グループセッションで学んだマインドフルネス瞑想を毎日30〜60分程度実践します。

提供している団体

さまざまなマインドフルネスの関連団体や医療機関がMBSRプログラムを提供していますが、ここでは主要な団体を3つご紹介します。なお、記載している情報は常時更新されるので、お申し込みの際は最新の情報をご確認ください。

団体名形式費用
現代マインドフルネスセンターオンライン49,800円〜
(別途特別割引あり)
MBSR研究会オンライン60,000円
(別途特別割引あり)
ブラウン大学(アメリカ)対面・オンライン対面::650 ドル
オンライン:599ドル

瞑想やボディスキャン、ヨガなどの主要な練習方法

MBSRではさまざまな瞑想を実践しますが、その中でも中心となる3つの瞑想法とやり方を動画を交えて紹介します。

静坐(せいざ)瞑想

姿勢を正して座りながら、呼吸の感覚に気づくベーシックな瞑想から始まって、注意を広げて音や思考、感情などにも気づいていく瞑想法です。

  1. まず楽な姿勢で座り、左右の坐骨に均等に体重をのせて骨盤を安定させます。
  2. その後、ゆっくりと気持ちよく背骨を伸ばしていきましょう。
  3. 次に呼吸を観察します。身体から自然に生じる吐く息と吸う息を丁寧に感じましょう。
  4. 途中で意識が呼吸から反れてしまったら、そっと意識を呼吸に戻してください。
  5. 1~4を数分間続けます。

ボディスキャン瞑想

身体のさまざまな部位に意識を向け、まるでスキャンするかのように身体感覚をありのまま感じ取る瞑想です。寝たままできるので寝る前にもおすすめの瞑想法です。

  1. まず横になり身体を布団に預けるようにしながら、自然な呼吸を行います。
  2. 息を吐くごとに余分な力が抜けていくのを実感して、徐々に腕や足といった身体のパーツ一つ一つをスキャンするように意識を向けます。この際、どのパーツから行ってもかまいません。
  3. 全身がスキャンできたら、身体全体を意識しながらゆっくりと呼吸を繰り返すようにしましょう。

寝ながらできるボディスキャン瞑想とは?効果を解説|やり方を動画で紹介」の記事ではボディスキャン瞑想の効果ややり方を詳しく紹介しています。

マインドフルネスヨガ

身体の感覚や状態に気づきながら、身体をのばしたりポーズをとる瞑想的なヨガです。その中から「月のポーズ」のやり方を紹介します。

  1. 椅子に浅めに腰を掛けます。背すじを伸ばし、足裏をピッタリと床につけましょう。
  2. 吸う息で、右手を天井に伸ばします。左手は「腰の当たり」か「椅子の座面」に置き、吐く息で身体を左に傾けてください。傾きは、わずかでも構いません。
  3. そこで少しキープして、のんびりと呼吸を繰り返しながら「身体の伸び」を丁寧に感じ取ります。(約30秒)
  4. ゆっくりと上体を起こして腕を下げます。身体の余韻を感じてみましょう。
  5. 逆も同じように行います。

マインドフルネスヨガ(動く瞑想)とは?やり方やおすすめポーズ4選」の記事では、ほかのポーズのやり方も紹介しています。

MBSRと併せて知りたい「MBCT・ACT・MCT」の違いと共通点

AとBのブロック

MBSRと似た治療法として「MBCT(マインドフルネス認知行動療法)」「ACT(アクセプタンス&コミットメント・セラピー)」「MCT(メタ認知療法)」と呼ばれるものがあります。ここではそれぞれの違いや共通点を解説します。

MBCT(マインドフルネス認知行動療法)

MBCT(マインドフルネス認知療法 Mindfulness Based Cognitive Therapy)は、MBSRと認知行動療法を統合したものです。なお、認知行動療法とはものの感じ方や考え方に働きかけて気持ちを楽にする心理療法の一種です。

MBCTでもMBSRと同様に、グループでマインドフルネス瞑想を実践し体験を共有しますが、両者の主な違いは目的にあります。

MBSRは疼痛やストレスなど身体的・心理的な症状に対処する方法を学ぶことを目的としています。一方MBCTは、元々うつ病の治療や再発予防が目的であったため、認知行動療法の手法を取り入れて、うつ病の原因となる思考パターンや感情にアプローチします。

参考:マインドフルネス認知療法(Mindfulness Based Cognitive Therapy)|慶應義塾大学保健管理センター

参考:高橋 美保ら(2017). MBCTのプログラムとしての治療的要素 : 体験に基づく探索的検討. 東京大学大学院教育学研究科紀要, 56巻.

ACT(アクセプタンス&コミットメント・セラピー)

ACT(アクセプタンス&コミットメント・セラピー)は、行動理論をベースとした認知行動療法の一種です。ACTでは、自己のありのままの思考や気持ちを受容(アクセプタンス)し、自分にとって重要な価値を明確にします。その上で、価値に基づいた行動(コミットメント)を取れるように促します。

ACTは、MBCT(マインドフルネス認知療法)と同様に認知行動療法の一種です。MBCTはマインドフルな状態を目指すことでメンタルヘルスの改善を目指しますが、ACTはマインドフルな状態になるのを目的とするのではなく、ありのままの思考を受容し、価値に基づいた行動を取れるようになることを目的とし、その目的を達成するためにマインドフルネス瞑想を活用します。

参考:「あるがまま」の心理学|公益社団法人日本心理学会

MCT(メタ認知療法)

MCT(メタ認知療法 Metacognitive Therapy)は、自分の思考の癖に気づき、それを効果的に管理することで、ストレスや不安を軽減する認知療法の一つです。なお、メタ認知とは自らの認知を客観的に捉えることです。

MCTでは、ストレスの原因となっている自分の考え方の癖や信念を特定し、それがどのように不安や抑うつ状態を引き起こしているか理解して修正していきます。

例えば「自分は何もできない」という考えがある場合、「本当に何もできないのか」と認知内容の妥当性を検証するのが従来の認知療法ですが、MCTでは「何もできないと考えるメリットは何か」を検証し、認知内容ではなくメタ認知の機能を修正します。

MCTでもマインドフルネス瞑想を治療のアプローチの一つとして取り入れていますが、目的はメタ認知能力の強化にあります。MCTではマインドフルネス瞑想やその他のアプローチによってメタ認知力を強化することで、問題となっている自分の信念に気づかせ修正します。

参考:今井 正司(2021). メタ認知療法からみたマインドフルネス. 心理学評論, 64巻, 4号.

MBSR(マインドフルネスストレス低減法)を始めるためのステップ

階段を上がる足

ここまで読んでMBSRを受けてみたいと思った方向けに、始めるためのポイントをお伝えします。

精神疾患や特定の健康状態を抱える人は医師に相談

マインドフルネスは基本的に安全です。しかし、マインドフルネスで思考を観察することで、精神的に不安定になったり、ストレスがフラッシュバックして不安が強くなってしまう場合があるため、以下の要件に当てはまる方は注意が必要です。

・重度のうつ病などの精神疾患を抱えている方
・強いトラウマやPTSDを抱えている方

これらに該当する方や不安な方は医師に相談の上始めるようにしてください。詳しくは「マインドフルネスをやってはいけない人とは|うつ悪化の可能性はある?」の記事でも解説しています。

信頼できるMBSR認定講師やコースを探す

さまざまな団体や医療機関がMBSRプログラムを提供しているためどれを選べばいいか迷ってしまうかもしれません。ここでは選ぶポイントを「研修の質」「通いやすさ」の2つの視点から紹介します。

研修の質

研修の質は講師の能力に大きく依存するため、

・公認資格の有無
・過去の参加者のフィードバック

を参考にするといいでしょう。

なお、公認資格としては、

・「MBSR Intensive Practice and Teaching (IPT)」:MBSRプログラムを提供できる資格
・「MBSR認定講師」:MBSR講師の資格を得たうえで、さらなる実践やトレーニングを積み審査を通過して得られるMBSRの集大成ともいえる資格

などがあります。

また、MBSR講師の資格を取得するには、MBSRの8週間プログラムの修了を求められます。資格取得を目指している場合は、コースが修了要件を満たしているかも確認するといいでしょう。

通いやすさ

上述のとおり形式はオンラインまたは対面のいずれもあり、開催される曜日も異なるので通いやすいものを選ぶようにしましょう。

参考:GMCのティーチャー・トレイナー・プログラムのパスウェイ(養成課程)|Global Mindfulness Collaborative

お試しでMBSRを受けてみる

ここまで読んでMBSRに興味が出てきたけど、金銭的・時間的に負担がかかるため、「お試しでやってみて合っていそうだったら本格的に始めたい!」と思った方もいるのではないでしょうか。

オンライン・マインドフルネスサービス「MELONオンライン」では、MBSRの8週間コースで行われる瞑想を体験できる「MBSR mini」のクラスを毎週開催しています。

「MBSR mini」のクラスを担当するのは米ブラウン大学認定MBSR講師のため、質が高く本格的な内容を学ぶことができます。

なお、「MELONオンライン」では「MBSR mini」以外にも月間300以上のマインドフルネスのクラスを提供しています。

・基本の呼吸瞑想を扱う「Basic」
・身体の感覚や呼吸に意識を向けながらゆったりと動いていく「Mindfulness Yoga」

など数多くのクラスがあり、「MBSR mini」で体験して気になった瞑想法をより深く体験できます。

クラスはリアルタイムまたはアーカイブ配信をご用意しているので、いつでもどこでも実践できます。また、一般社団法人マインドフルネス瞑想協会の資格を持つプロのインストラクターが丁寧にわかりやすくレッスンを行うため、初心者の方も安心です。

まずは、14日間の無料トライアルから始めてみませんか?

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まとめ|マインドフルネスでストレスを解消するMBSR

今回はMBSR(マインドフルネスストレス低減法)とは何かやその効果を紹介しました。

仏教に起源を持つマインドフルネスですが、MBSRが開発されてからは科学的に研究が進められ効果が実証されるようになりました。

数あるマインドフルネストレーニングの中でも、特にMBSRはストレス軽減を目的としています。ストレスにお悩みの方は、MBSRのプログラムを受講してストレスへの対処法を学び、より健康で幸せな人生を送りましょう。