自尊心とは?高める方法や自尊心の高い人・低い人の特徴を解説
「どうして自分に自信が持てないんだろう」
「他人と比べてばかりで、いつも落ち込んでしまう」
自尊心が低いと自分を認められず、前向きな行動が難しくなります。日々を明るく過ごすためには、自尊心を高めることに目を向けてみましょう。
今回は、自尊心とは何かや自尊心を高めるための具体的な方法などを解説します。自分に自信が持てずに悩む方や、他人と自分を比べてしまいがちな方は、ぜひ参考にしてください。
自尊心とは?プライド・自己肯定感との違い
「自尊心」とは、心理学の概念で、「自己に対する肯定的または否定的な態度や自己価値の感情(feelings of self-worth)のこと」と定義されています。これは自分の良い面も悪い面も含めて、ありのままを尊重する気持ちを指します。
「悪い面も含めて尊重する」という考えが示すとおり、完璧な自分になれていない場合でも、自尊心の形成は可能です。
どのような人にも理想とする自分像がありますが、現実とのギャップがあったとしても、その理想に近づくための努力や失敗、成功を積み重ねていくことで、自尊心は少しずつ育まれていきます。
近年では自尊心を「顕在的自尊心」と「潜在的自尊心」に分けて考えることも少なくありません。努力や失敗を繰り返すことで自然に育つのは「顕在的自尊心」で、これは表面的な自尊心といえます。
一方で、「潜在的自尊心」は無意識下に存在しています。努力して成果を出しても自分を肯定できない場合、この潜在的自尊心が低い可能性があります。
潜在的自尊心を高めるには日々の積み重ねに加え、自尊心を高める方法を日常的に取り入れることが大切です。
参考:顕在的自尊心と潜在的自尊心|公益社団法人日本心理学会
自尊心とプライドの違い
自尊心とプライドは混同されやすいですが、両者には明確な違いがあります。
例えば、自尊心は「自分自身を基準として育む感情」です。一方で、プライドは「他者と比較して自分の価値を感じる感情」といえます。
自分自身を基準にして培われる自尊心は一度育めば安定しますが、プライドは他者との比較によって左右されるため、不安定な傾向にあります。また、自尊心が高い人は周りにも穏やかに対応できますが、プライドが高い人は他者を見下したり高慢な態度をとったりして、トラブルに発展することも少なくありません。
自尊心と自己肯定感の違い
自尊心と自己肯定感も、混同されやすい言葉です。
両者の異なる点は、自尊心が「自分自身の価値を信じ、前向きに評価する感覚」であるのに対し、自己肯定感は「失敗や挫折も含めて自分を受け入れる力」に焦点を当てている点です。
どちらもよく似た考え方ではありますが、自己肯定感は「どんな自分でも大切だ」と思える力であり、自尊心は「自分の努力や成果を認め、それを自信につなげる」ような感覚といえます。
つまり自己肯定感が基盤となり、その上に自尊心が育まれるという関係性にあるのです。
自尊心を高めるためには?具体的な方法
自尊心は、目標に向けた行動や思考によって育まれていきます。しかし自尊心の低さに悩む人は、目標を意識した行動だけでなく、次のことも日々の暮らしに取り入れてみると良いでしょう。
自分の価値や長所を理解する
自分の良いところや得意な部分に目を向けることは、自尊心の向上を促します。思い浮かぶ自分の価値や長所を挙げて、自分自身にそれを語りかけてみましょう。
もし自分の良いところが見つからない場合は、他者に聞いてもいいでしょう。親しい友人や家族から良いフィードバックを得ることで、自分の価値を再発見できます。
参考:安藤清志 (2019). 本物の自尊心を育むために. 教育心理学年報, 58, (351-362).
自己思いやりの心を育てる
自己思いやりの心を育てることも、自尊心を育む上で大切です。自分への思いやりがある人は、失敗や後悔をしても自分自身を責めず、努力の経過を認められるため、自尊心をより高めることができます。
参考:Anaïs Ortizら (2023). Self-Compassion, Personal Improvement, and Motivation. Springer NatureLink, 201-211.
自分を思いやる方法については、「自分への思いやりを育む方法とは?自分を大事にする考え方やその効果」で詳しく解説しています。思いやりの心を育てるために、ぜひチェックしてみてください。
人とのつながりを大切にする
人間関係は、自尊心を高める上で欠かせない要素です。
アメリカ心理学会が発表した研究によると、自尊心の発達には人との社会的なつながりが有効であることが示されています。
社会的なつながりとは、会社の人や友人はもちろん、親子関係や近所の店員など、自分以外の他者とのつながりすべてを指します。
コミュニケーションによって相手を認め合う関係性を築くことで、自分の価値や社会的役割を再認識し、自尊心が育成されます。
参考:Sarah Conradtら (2019). Interpersonal support and resilience in psychological well-being: A meta-analysis. Journal of Personality and Social Psychology, 117, (5).
マインドフルネスを取り入れる
マインドフルネスは、自分の感情や思考に意識を向け、ありのままを受け入れるセルフケアです。
マインドフルネスを実践することで、自分への気持ちや思考に気づきやすくなります。また、湧いてくる感情や考えに対して良い悪いの判断を下さず、その意見を持つ自分を受け入れることで、心の柔軟性が育ち自尊心にも良い影響を与えます。
マインドフルネスは集中力の向上にも効果的です。マインドフルネスを習慣化し、仕事や勉強などへの集中力が増せば、より良い成果を得られるでしょう。努力によって得た成果は自分への自信につながり、自尊心を高める力となります。
参考:荘季靜ら (2023). 日本語版Parenting Sense of Competence (PSOC)尺度特性の検討:学齢児童の親を対象とした予備的調査. 日本心理学会大会発表論文集, 87.
マインドフルネスの詳しいやり方や効果などは「マインドフルネスとは?意味・効果・仕組みなど全てを体系的に徹底解説」で解説しています。ぜひ、参考にしてみてください。
自尊心が高い人・低い人それぞれの特徴
自尊心が高い人や低い人とは、どのような人なのでしょうか。それぞれの特徴を、見ていきましょう。
高い人の特徴
自尊心が高い人には、次のような特徴があります。
・精神的に健康
・対人関係能力が高い
・学業成績・業務成績が良い
自尊心が高い人は精神的に安定しており、ポジティブな考えを持つ傾向にあります。そのため友人や家族、会社の同僚などとの関係性も良好で、周囲から信頼を得やすい点が特徴です。
また、自分自身に否定的ではなく失敗を恐れないことから、困難な課題にも積極的に挑戦します。物事に真摯に取り組む姿勢が、学業や仕事でも良い成果を残す原動力となるのです。
参考:大谷和大 (2014). 自尊心が学業達成に影響を及ぼす過程:自己価値の随伴性に着目した検討. 大阪大学博士論文.
低い人の特徴
一方で、自尊心が低い人には以下の特徴があります。
・精神的に不安定
・神経質
・挑戦に対して消極的
自尊心が低い人は、自己否定的で神経質な傾向にあります。そのため物事への挑戦にも消極的です。たとえ良い結果を残せても、悪い部分ばかりが記憶に残り、自分を責めてしまう傾向にあります。
参考:中間玲子 (2013). 自尊感情と心理的健康との関連再考:「恩恵享受的自己感」の概念提起. 教育心理学研究, 61, (4).
参考:脇本竜太郎 (2010). 自尊心の高低・不安定性の2側面と達成動機の関連. 日本パーソナリティ心理学会, 18, (2).
自尊心が低い原因
自尊心の低さは、幼少期や過去の経験などが起因していることもあります。
ここからは、自尊心が低い原因を見ていきましょう。
身近な人から認められる経験が少ない
青年を対象とした研究で、親から褒められる機会が少なかった人や、周囲から否定的な意見を多く浴びさせられた人ほど、自尊心が低い傾向にあることがわかっています。
親や周囲から褒められたり認められたりする経験が少ない場合、自己評価の基盤が十分に育ちません。その結果「自分は何をやってもダメだ」といった否定的な自己イメージが形成されやすくなります。
参考:Michal Mannら (2004). Self-esteem in a broad-spectrum approach for mental health promotion. Health Education Research, 19(4).
他者と自分を比較する・されることが多い
自尊心が十分に育まれている人は、自分の価値を理解しています。そのため他者と自分を比較されても心に大きく響くことはありません。
しかし自尊心が低い人は自分を低く評価する傾向にあります。そのため、第三者に自分と他者を比較されることで「他の人よりも、自分はずっと劣っている」と考えてしまいがちです。比較によって自信が損なわれることで、自尊心も低下していきます。
最近ではSNSの発展もあることから、1人でいても自分と誰かを比べてしまう機会が多くあります。自尊心の低さに悩む方は、一時的にSNSから離れてみるのもひとつの手です。
参考:Yasmin Z. Hurdら (2022). Low self-esteem and the formation of global self-performance estimates in the absence of external feedback. Translational Psychiatry, 12, (31).
過去の失敗体験が忘れられない
過去に経験した大きな失敗や挫折も、自尊心を低下させる大きな理由のひとつです。
106名の男女を対象に行った研究では、能力テストに失敗をした後、人は自尊心が低くなることも明らかになっています。
失敗の記憶が何度も頭をよぎると、「また失敗するかもしれない」「自分には無理だ」という思考にとらわれ、自分を否定的に見る癖がついてしまいます。また、失敗に対して周囲からの批判が強かった際、その体験がより強く心に刻まれ、「自分には価値がない」という感覚を持ち続けてしまうことも少なくありません。
参考:李可奈ら(2000). 失敗経験がもたらす自尊感情への影響. 日本教育心理学会総会発表論文集, 42, (458).
「自尊心が傷つく」とはどんな状態?
自尊心が傷ついた状態とは、「自分のことを尊重できなくなった状態」のことをいいます。
自分のことを尊重できなくなると、自分を否定的に捉える思考が強まり、物事への意欲も低下していきます。また、自分と他人をつい比較し、自分の劣った部分ばかりを注視してしまうことから、他者との関わりも消極的になりがちです。
では、どのようなことで自尊心は傷つくのでしょうか。自尊心が傷つく主な原因について見ていきましょう。
自尊心が傷つく原因
自尊心が傷つく原因のひとつとして「傷つく言葉を投げられる」ことが挙げられます。
「そんなこともできないの?」「あなたには無理だよ」などの言葉が自分自身の価値をわからなくし、自尊心を傷つけてしまうこともあります。
また、自己評価よりも低い結果しか残せず、自尊心が傷つくこともあります。自尊心が安定している人であれば「次に活かせばよい」「頑張った過程が大切」と結果によって心が乱されることはありません。しかし自尊心が不安定な人は、自分自身を責める気持ちが生じてしまうでしょう。
そのほかにも、良かれと思った行動が裏目に出たり、誰かに誤解されたりした際に、自尊心が傷つくこともあります。
自尊心が傷ついたときは、すぐに適切なケアをして、早めに回復させることが大切です。
自尊心が傷ついたときに行うべき対処方法
自尊心はとても繊細なもので、誰でも傷ついてしまうことがあります。しかし適切な心のケアを行えば、再び回復させることができます。
自尊心の回復を促す心のケア方法として大切なのは「つらい」という気持ちを言葉にして吐き出したり、人とコミュニケーションを取ったりすることです。
精神的な傷みやつらさを自分の中で消化させず、弱った自分を受け入れたり誰かに認めてもらったりすることで、自尊心は次第に回復していきます。
また、「セルフコンパッション」を高めることも、傷ついた自尊心を回復させる有効な方法です。セルフコンパッションに取り組み、落ち込む自分を優しく慰めることで、傷ついた自尊心が徐々に満たされていきます。
セルフコンパッションについては、以下の記事で詳しく解説しています。ぜひ、参考にしてください。
まとめ|自尊心を高めることで自分を大切にできるようになる
自尊心は、日々の習慣や意識を変えることで向上します。自尊心を高め自分の価値を認めることができれば、前向きに行動する力が育まれ、日々がより豊かになるでしょう。
自分に自信がなかったり、自分を責めてしまったりしがちな方は、ぜひ本記事を参考にして、自尊心を育んでみてください。
自尊心の向上には、マインドフルネスが効果的です。マインドフルネスに取り組むことで、ありのままの自分を受け入れる心が育ち、自尊心も高まっていきます。
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