マインドフルネスでエンゲージメントを高める!背景や実践法を解説
企業を成長させていく上で、従業員のエンゲージメントは欠かせない重要な要素です。しかし、具体的にどう高めればいいか頭を悩ませている企業も多いのではないでしょうか。
その解決策として注目されているのが「マインドフルネス」です。企業の生産性向上や離職率低下に効果があるとして、さまざまな企業で取り入れられ始めています。
そこで今回は、マインドフルネスを用いてエンゲージメントを高める方法を具体的に紹介します。法人の人材開発に関わっている方や会社の人事担当者の方などは、ぜひ参考にしてください。
エンゲージメントとは?
「エンゲージメント(engagement)」とは、従業員の会社や仕事に対する愛着心や思い入れという意味です。
仕事におけるエンゲージメントという考えを最初に提唱したのは、アメリカの組織行動学者のウィリアム・カーンで、パーソナル・エンゲージメントを「組織構成員が自己を仕事上の役割に活用すること」と定義しました。
ビジネスシーンにおけるエンゲージメントとは、一言で表すと「従業員が能動的に組織に関わっていく姿」を意味します。具体的には、従業員が自社に対してどれだけの情熱や献身性を持っているかを示す指標といえます。
エンゲージメントは、「知的エンゲージメント」「行動的エンゲージメント」「情緒的エンゲージメント」の3つの要素で構成されています。
これらの要素は相互に関連し、一つが高まると他の要素も強まるといわれています。
参考:髙橋好江ら(2021). 仕事におけるエンゲージメントの概念整理と今後の方向性: 組織で働く看護職の特性を踏まえて,日本医療・病院管理学会誌,58,4.
エンゲージメント向上が企業に必要な理由とは?高めるメリットを紹介
企業が従業員のエンゲージメント向上に力を入れるべき理由は、単に従業員の満足度を高めるためだけではありません。
ここではアメリカの大手コンサルティング会社「Gallup」が行った、96か国270万人の従業員を対象としたメタ分析の結果をもとに、どのようなメリットがあるか解説します。
参考:The Benefits of Employee Engagement|Gallup
(1)生産性の向上
エンゲージメントの高い従業員は、仕事への意欲が高く、自主的に目標達成に向けて行動するため、生産性が向上します。
Gallup社の分析では、エンゲージメントが高い組織は低い組織に比べて生産性(売上)が18%高いという結果が明らかになりました。
(2)離職率の低下
エンゲージメントがもたらすもう一つのメリットは、エンゲージメントが高いと定着率が向上することです。
積極的にエンゲージメントしている従業員は、新しい仕事の機会を積極的に探したり、受け入れたりする可能性が低くなります。エンゲージメントの低いチームは高いチームよりも離職率が18〜43% 高くなります。
(3)顧客満足度の向上
従業員の仕事へのモチベーションが高まると、顧客対応にも積極的になり、良い評判が広まる、顧客のリピート率が上がるなど、顧客満足度の向上につながります。
エンゲージメントが高い組織では、顧客ロイヤルティや顧客のエンゲージメントも10%向上します。
マインドフルネスがエンゲージメントを高める理由|研究結果から解説
では具体的に何をすれば、従業員のエンゲージメントを高められるでしょうか。その方法のひとつがマインドフルネスです。
さまざまな研究により、マインドフルネスを実践することで脳が活性化され、仕事に関する肯定的な感情が養われることで、エンゲージメントが向上することが明らかになっています。
ここではマインドフルネスがエンゲージメントを高める理由を、研究結果をもとに詳しく解説します。
マインドフルネスの効果について、もっと知りたい方は「マインドフルネス瞑想の効果とは?エビデンスに基づく9つの研究を解説」の記事で紹介しています。ぜひご覧ください。
ストレスへの対応力が向上し、仕事の満足度が高まる
マインドフルネスを習慣的に行うことでストレスが軽減することは、よく知られていますが、さらにマインドフルネスのスキルが高いほど、エンゲージメントも高くなり幸福度も増すことや、マインドフルネスがレジリエンスを向上させるという研究結果も明らかになっています。
マインドフルネスを実践することでストレスが軽減し、レジリエンスの向上や、仕事に対してもポジティブな気持ちを持つことができるようになるのです。
参考:Peter Malinowskiら(2015). Mindfulness at Work: Positive Affect, Hope, and Optimism Mediate the Relationship Between Dispositional Mindfulness, Work Engagement, and Well-Being. Mindfulness,6.
マインドフルネスとストレスの関係について、より詳しく知りたい方は「マインドフルネスはストレス解消に効果的?やり方や注意点を解説!」の記事で紹介しています。ぜひご覧ください。
自己効力感が向上し、モチベーションが高まる
マインドフルネスは、セルフ・コンパッション(自己への思いやり)を育みます。
研究では、マインドフルネスのスキルが高いほど不安を感じにくくなるため、自己効力感が上がることが実証されています。さらに自己効力感はモチベーションを向上させ、成果にもつながります。
マインドフルネスを実践することで、困難な仕事であっても「自分ならできる」と前向きな気持ちで取り組むことができるようになるのです。
参考:Nasser Fallah(2016).Mindfulness, coping self-efficacy and foreign language anxiety: a mediation analysis. Educational Psychology An International Journal of Experimental Educational Psychology.
EQを高め人間関係を改善する
人間関係も、エンゲージメントに大きな影響を及ぼす要素のひとつです。
職場のチームのメンバー全員が「今、この瞬間」に意識を集中し、お互いの意見や感情を冷静に受け止めようとする状態のことを「チーム・マインドフルネス」といいます。
研究結果によると、チーム・マインドフルネスが高いチームは、
・人間関係のトラブルが少なくなる
・意見の衝突が、人間関係の悪化に繋がりにくい
・個人間の陰口や悪口といった行動が減る
という良い効果があることがわかりました。
つまり、マインドフルネスを実践することでEQを高め、人間関係を改善し、エンゲージメントを高めることができるのです。
参考:Lingtao Yu and Mary Zellmer-Bruhn(2017). Introducing Team Mindfulness and Considering its Safeguard Role Against Conflict Transformation and Social Undermining.Academy of Management Journal,61,1.
マインドフルネスでエンゲージメントを高めた事例
ここでは、マインドフルネスでエンゲージメントを高めた企業の事例を紹介します。
エンゲージメント向上で組織が活性化した事例
世界最大級の総合切削工具メーカーでOSGグループの系列会社である株式会社青山製作所では、ウェルビーイング向上の目的で、マインドフルネスを社内研修として導入しました。
「幸せに生きる社員を増やしたい」という想いから始まったマインドフルネス研修でしたが、自然に従業員のエンゲージメントが高まり、社内のコミュニケーションが活発化しました。
青山製作所の導入事例を、より詳しく知りたい方は「【青山製作所様 導入事例】エンゲージメント向上で組織が活性化!〜人間関係が改善し、コミュニケーションが円滑に〜」で紹介しています。ぜひご覧ください。
メンタルヘルスケアと業務効率化を実感した事例
「世界中の未来をつくる」をミッションに掲げる三井物産株式会社では、従業員のエンゲージメントを向上させる方法や、チーム内コミュニケーションに課題を感じていました。
社内研修としてマインドフルネスを導入後は、「心身のコンディション」と「感情調整力」の効果測定値が大幅に向上。従業員の感じる心理的安全性が向上して、相互理解や思いやる気持ちを持つきっかけにもなり、業務の効率化も進みました。
三井物産株式会社の導入事例をより詳しく知りたい方は「【三井物産様インタビュー 】メンタルヘルスケアと業務効率向上の効果を実感。「心を落ち着かせる」がもたらすもの」で紹介しています。ぜひご覧ください。
エンゲージメントを高めるマインドフルネスを企業に取り入れる方法2選
ここでは、マインドフルネスを企業に導入する方法として「研修」と「オンラインプログラム」を紹介します。
法人向けマインドフルネス研修の効果について詳しく知りたい方は「マインドフルネスが企業にもたらす効果とは?導入事例や実践法も解説」の記事で紹介しています。ぜひご覧ください。
(1)マインドフルネス研修
マインドフルネス研修は、座学で理論を学び、実際に体験する実践の2つで構成されます。オンラインと対面から選べます。
形式 | ・講師を招いて行う対面型の研修 ・近年ではオンライン形式も増加 |
内容 | ・座学:マインドフルネスの基本的な理論や実践方法 ・実践:参加者自身がその場で実践 |
フォローアップ | ・オンラインアプリで進捗や継続日数などを確認 ・マインドフルネスの継続をサポートするシステム |
効果測定 | ・定量的なアンケート(ストレスレベル・注意力向上など) ・定性的なフィードバック(精神的な健康の改善・コミュニケーションの改善など) |
効果的な研修を選ぶポイントは以下の通りです。
・講師の質: 公認資格や参加者の評価。
・内容とカスタマイズ: 目的や形式が企業に合っているか。
・実績:効果が実証されているか。
・継続性:フォローアップ体制があるか。
また、マインドフルネスは継続が大切です。短期で終了する研修は、フォローアップがしっかりしているプログラムを選ぶことをお勧めします。
(2)オンラインプログラム
福利厚生として、オンラインのマインドフルネスレッスンを提供することも一つの手段です。
MELONでは、個人と組織の課題を解決する「法人向けプラン」を提供しており、すでに200を超える企業で導入されています。
継続して利用しやすいセルフケアのコンテンツ「MELON ONLINE」やパルスサーベイによるストレス計測を活用することで、これまで見過ごされがちだったメンタル不調の早期発見や、高ストレス状態にある社員の適切なケアが実現できます。
導入企業の1か月後のサーベイでは、平均してストレスが19%軽減。さらに、睡眠の質が20.9%、レジリエンスが23.4%、疲労感回復が20.6%それぞれ向上しています。
早稲田大学との共同研究で高い効果が実証されたプログラムで、メンタル不調の予防だけでなく、離職・休職予防や生産性向上が叶います。
詳しくは下記バナーからお問い合わせください。
マインドフルネスでエンゲージメントを高めるには2か月の継続が必要
マインドフルネスの効果を実感するためには、継続的な実践が重要です。多くの研究では、約2か月のマインドフルネスの継続した実践が脳の構造や機能に変化をもたらし、さまざまな効果を得られることが実証されています。
つまり、マインドフルネスによるエンゲージメント向上の効果を感じるには、最低でも2か月継続できるような環境を整えることが重要です。
さらに、効果を数値で実証するためにも、研修前と後のサーベイがとれるサービスを利用することをおすすめします。効果を可視化し、共有することでマインドフルネス継続のモチベーションにもつながります。
参考:Tetsuji Ietsuguら(2015). Gradually Getting Better: Trajectories of Change in Rumination and Anxious Worry in Mindfulness-Based Cognitive Therapy for Prevention of Relapse to Recurrent Depression.Mindfulness,6,(5).
まとめ|マインドフルネスで効率的にエンゲージメントを向上
今回は、マインドフルネスを用いてエンゲージメントを高める方法を解説しました。
エンゲージメントを高めると、従業員の生産性が向上する・対人関係が改善する・離職率が下がるなど、さまざまな良い効果を得ることができます。
マインドフルネスを実践することで、従業員のエンゲージメントを高め、さらなる事業成長につなげましょう。