健康経営でエンゲージメントを向上する方法とは?従業員のストレスケア実践法を紹介
人手不足やメンタルヘルスの不調による休職者増加を背景に注目を浴びている健康経営。
しかし、経営者や人事担当者の中には、
「日々の業務に手一杯で、そこまで考える余裕がない」
「従業員のエンゲージメントが低く、生産性を上げる方法を考えるのに必死」
といった悩みを抱えている方も多いのではないでしょうか。
しかし、エンゲージメントを高め、生産性を向上させるには、従業員の心身の健康を促進することが大切です。
今回は、MELON代表の橋本へのインタビューをもとに、ストレスケアとエンゲージメント向上を同時に叶え、健康経営を促進する手法を紹介します。
テレワークの導入によるコミュニケーション課題がある企業でも取り入れやすい方法ですので、ぜひ参考にしてみてください。
エンゲージメントの重要性はこちらの記事で詳しく解説しています。
エンゲージメント向上の鍵は「健康」
ーーエンゲージメントを高めるために、なぜ「健康」が重要なのでしょうか?
簡単に言うと、仕事はもちろん、何をするにしても元気な状態でないとやる気が出ないからです。
例えば、「頭やお腹がずっと痛い」といった状態では、残念ながら仕事が手につかなくなってしまいます。こういった状態に陥らないためにも、心身に余裕があり、問題なく仕事ができるだけの最低限の健康状態が必要です。
ただし、100%健康でなければいけないというわけではありません。なぜなら、健康やウェルビーイングは「0か100か」といった話ではなく、人によってグラデーションや段階があるものだからです。
「少しだけ持病がある」「血圧が高い」「ぼんやりとした心配事がある」といったように、人によって身体の状態や健康の度合いは異なります。こういった状態が不健康かというと、むしろ普通の状態で当たり前のことだと考えています。
ーー会社や組織でパフォーマンスを発揮するには、健康状態を一定以上に保つことが重要なのですね。
そうですね。そして、健康・ウェルビーイングは大きく「身体」と「心」の2つに分けられますすが、どちらも同じくらい大切です。
例えばデスクワークをしている場合、「手をケガしてしまってパソコンが使えない」という事態が起こると、仕事に大きな支障をきたしますよね。同様に「心配事が頭から離れない」「ずっとイライラしてしまう」という状態でも、仕事に大きな影響が出てきます。
したがってエンゲージメントを高めるには、「従業員が心身ともに一定以上健康である」というのが最低限必要な条件であるといえます。
心の健康状態(メンタルヘルス)は悪化し続けている
ーーでは、一般的に現代人の「身体」と「心」の健康度合いはどういった状況にあるのでしょうか?
実は、身体の健康はかなり改善してきています。なぜなら、「塩分や脂質の高い食事を控えよう」「運動をしよう」といった生活習慣病を予防するためのセルフケアが広まり、多くの人が身体の健康に気を付けるようになったためです。
その一方で、心の健康は悪化し続けているのが現状です。例えば、うつ病の発症率・患者数は、過去20〜30年で2倍から3倍に増えています。
また、NTTデータ経営研究所が実施したアンケート調査では、対象者の43%が「精神的な健康度が低い」と回答しています。さらに精神的な健康度が低い人のうち、約7割がエンゲージメントが低いこともわかっています。
つまり、心の健康とエンゲージメントの高さには相関があると考えられます。社会的に心の健康度は悪化しているものの、多くの会社ではメンタルケアが手つかずになっているのが現状です。
参考 : NTTデータ経営研究所が 「ウィズコロナ時代における、働く人のストレス解消方法と メンタルヘルステックの活用可能性に関する調査」を実施|NTTデータ経営研究所
「リモートワークの孤独」が心の健康に影響を及ぼす
ーー心の健康状態が悪化し続けている原因とは、一体何なのでしょうか?
新型コロナウイルスの影響によって、人との関わりが減ってきていることが一因だと感じています。
家族がいらっしゃる場合は家で人と会えますが、一人暮らしをされている場合、リモートで仕事をしていると、物理的に人と会う機会が減ってしまいます。
また、心の健康状態が悪化し続けているのは、リモートワークが定着したことも要因の一つだと考えています。
というのも、人間はそもそも社会的な動物なので、一人では生きていけないですよね。生きていく上で人と関わることが一番重要で、逆に言うと「孤独」というのは心の健康を害する因子なのです。
ーー確かに、新型コロナウイルスの流行以降、チャットやZoomなどでのコミュニケーションばかりになっているように感じます。
そうなんです。そして人と関われない状態が続くと、本人が気づかないうちに気が滅入ってしまうんですよね。
例えば「なんとなく元気がでないな」とか「外に出たくない」と思ったりとか。こういった気分の落ち込みが、心の健康に悪い影響を及ぼす要因になっているのです。
ーー実際、従業員のメンタルヘルスの不調に悩まされている企業は多いのでしょうか?
はい。さまざまな会社から、そういった話を頻繁に聞きます。
例えば、ある会社の人事の方から聞いた話では、ストレスチェックを実施して全体のスコアを見たところ、コロナの影響で少しずつ悪化したそうです。
ところが、メンタルヘルスの不調はリモートワークをしていると目に見えないので、企業の人事担当者にとっては非常に厄介な問題となっているのです。
テレワーク時代のメンタルヘルス対策には「セルフケア」が重要
ーーでは、会社でメンタルヘルスをケアするには何をすれば良いのでしょうか?
一般的に、職場でのメンタルヘルス対策として挙げられるのは以下の3つです。
・ラインケア
・セルフケア
・産業医によるケア
ラインケアとは、上司が部下の様子を気にかけたり、調子が悪そうなときに話を聞いたりしてケアすることです。
これはメンタルヘルス対策の中でメインともいえるものであり、本来は職場で行われていたことなのですが、リモートワークが主流になったことで実践しづらくなりました。
オンラインでの打ち合わせで話す機会はあっても、普段の何気ない様子は見られませんし、プライベートな話もほとんどしませんよね。そのため、上司はごくわずかな情報しか得られず、メンタルの不調に気づきにくくなってしまいます。
さらに、本当はメンタルの不調を抱えていても、画面越しでは何の問題もないように見えることもあります。
ーーラインケアが十分にできないとなると、セルフケアや産業医による対策が重要になりそうですね。
そうですね。ただ、日本の企業で「メンタルのセルフケアをしよう」と言っているところは、まだ少数派なのが現状です。
そして、予防的な措置であるラインケアとセルフケアがないとどうなるかというと、対処療法のような位置付けである産業医にかかることになります。
産業医ではもちろん話は聞いてくれますし、「本当に具合が悪いようであれば病院で診てもらってください」とクリニックを紹介してくれたりもするのですが、必ずしも改善するわけではないんですよね。
ーー産業医では適切なアドバイスはもらえるものの、本質的な解決にはつながりにくそうですね。
そうですね。もちろんそれが悪いわけではなく、むしろ必要な機能ではありますが、何度も産業医に相談するということは、心の問題が解決していないということです。
最近では「出社しましょう」という流れに少しずつ戻ってきていますが、完全にコロナ以前の頃のように全員出社というスタイルにはならないでしょう。そうすると、今後もラインケアがしにくい状態が続きます。
そうした場合、有力な選択肢として残るのが「セルフケア」なんです。
心のセルフケアにはマインドフルネスが有効
ーー心のセルフケアをするには、具体的に何をすれば良いのでしょうか?
これにはさまざまな方法があります。例えば趣味のスポーツをやる、友人と話したり飲んだりする、サウナに行くなどが考えられます。どれも心がスッキリするようなことで、専門用語ではコーピング(ストレスに対処するための行動)ともいいます。
さらに、会社の中でメンタルヘルスの改善・維持をするためのセルフケア方法として、マインドフルネスがあります。
ーーマインドフルネスと心の健康にはどのような関係があるのでしょうか?
マインドフルネスは、先ほど紹介したコーピングの一種です。頭がごちゃごちゃしていると感じるときや疲れているときなどに、1日1分でもマインドフルネスを実践することで、ストレスを手放せるようになります。
また、マインドフルネスを習慣化することで、自分の心の状態が見えるようになります。「今疲れているな」「イライラしているな」といったように、自分の感情を認識できるようになるのです。つまり、マインドフルネスによってストレスを認識し、手放すことで、心にストレスが溜まらない状態を作ることができます。
イメージとしては、「マインドフルネスをすることで心の部屋が綺麗になっていく」という感じですね。
マインドフルネスとは何かについてはこちらの記事で詳しく解説しています。
ーーマインドフルネスを習慣化すれば、「ストレスが溜まりすぎて苦しい」となってしまう状態を避けられそうですね。
そうですね。最初にお話したように、心身の健康状態は0から100の間を行ったり来たりしています。そして仕事ができなくなる一定のラインまでストレスが溜まってしまうと、パフォーマンスがガクッと落ちるわけです。
しかし、マインドフルネスによるセルフケアができるようになると、心を健康な状態に保ち続けることができます。
例えば、「仕事で疲れた」「人間関係で嫌なことがあった」といったことでストレスを感じても、それを認知して「ストレスが溜まっているからマインドフルネスをやろう」となれば、ストレスを手放して心を綺麗な状態にすることが可能です。
つまり、マインドフルネスは仕事や会社のためだけにやるものではなく、人生を豊かにするために必要なものです。
メンタルヘルスの改善に欠かせないのは「習慣化」
ーー心のセルフケアとしてのマインドフルネスは、研修などで一度実践すれば十分なのでしょうか?
心の健康を維持するには、一度やって終わりにするのではなく、習慣化することが重要です。
というのも、マインドフルネスは頭で理解するだけでは不十分だからです。例えば、筋トレの仕方を覚えるのと筋トレをすることは全く違いますよね。筋トレの仕方を覚えるだけではなく、しっかりと繰り返し実践しなくては筋肉はつきません。
同様に、マインドフルネスも習慣化する必要があります。
こちらの記事では、マインドフルネスを継続するのが重要な理由や継続するコツを解説しています。
国も推奨する健康経営の手法「マインドフルネス」
ーー健康経営とマインドフルネスにはどのような関係があるのでしょうか?
まず、健康経営というのは「働いている人が健康に働けるように努める」ことで、経済産業省が推進しています。そして、経済産業省は健康経営の評価項目の中でマインドフルネスという言葉を使用しています。
ーー健康経営にはさまざまな手法がある中で、なぜマインドフルネスが注目されているのでしょうか?
簡単に言うと、科学で認められた心の健康法だからです。マインドフルネスの効果については世界中で研究が進められており、オックスフォード大学を含む一流の研究機関でも効果が実証されています。
心の世界というのはまだわからないことが多くあるので、マインドフルネスほど科学的に認められている方法はあまりないんですよ。心の健康を維持するための方法論の一つとして、国からもお墨付きを与えられているのがマインドフルネスなんです。
マインドフルネスの効果とそれを立証する研究についてはこちらの記事で紹介しています。
まとめ|マインドフルネスでエンゲージメントを高め、健康経営を実現
今回は、エンゲージメントと健康経営の関係性について解説しました。
従業員のパフォーマンスやエンゲージメントを向上させるには、まず「心身の健康」という土台がなくてはなりませんが、マインドフルネスは心の健康を促進するのに有効かつ手軽な手法です。
ぜひ、マインドフルネスを取り入れて、従業員の方々のメンタルケアとエンゲージメント向上を同時に叶えましょう。
マインドフルネスでエンゲージメントを高める方法についてさらに詳しく知りたい方は、以下の資料をご覧ください。
こちらの記事でも、マインドフルネスがエンゲージメントを促進する背景を解説しています。
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医療機関にて復職リワークプログラムとして提供してきたノウハウを活かし、月額定額で従業員の方のストレスケアを行い、高ストレス者の対策、要注意者のメンタルケア予防、プレゼンティーイズムの改善に寄与します(早稲田大学との研究で効果を実証)。
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こちらの記事では、MELONのマインドフルネス研修により、社内のコミュニケーションが円滑になり、エンゲージメントも高まった事例を紹介しています。
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