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従業員エンゲージメントと組織文化の改善にはマインドフルネスが有効!その仕組みを解説

会社員が話している様子

企業の経営者・人事担当者のなかには、「従業員エンゲージメントに課題を感じている」「心理的安全性が低いと感じる」といった悩みを抱えている方も多いのではないでしょうか。

組織の生産性を高め、エンゲージメントを高めるには、組織文化のなかで「心理的安全性」と「ダイバーシティ」を確保することが不可欠です。

本記事では、従業員エンゲージメントの向上に欠かせない組織文化や心理的安全性・ダイバーシティについて、MELON代表 橋本へのインタビューをもとに紹介します。

組織文化とマインドフルネスの関係性も紹介しますので、ぜひ最後までご覧ください。

エンゲージメントを高めるために重要な「組織文化」とは?

文化について話し合う企業の人々

ーーエンゲージメントを高めるために重要な「組織文化」とは、どのようなものなのでしょうか?

組織文化とは、特定のグループが集まって活動していくことで生まれる価値観・行動様式などのことです。特定のグループとは、会社はもちろん家庭や友達、部活動など、長く一緒にいる人たちの集まりのことを指します。

組織文化は国の文化と同じ側面を持ち、さまざまな価値観があります。そのため一概に「良い」「悪い」とは言い切れません。

また、組織の創業者やグループリーダー、メンバーなどの価値観によって定義されていくものなので、必ずしも「どの企業・グループも同じ組織文化でなければならない」ということもありません。

組織文化を良くするために重要な「心理的安全性」と「ダイバーシティ」

社員が笑顔で話している様子

ーー良い組織文化を作るためには、どのような考え方が重要なのでしょうか?

組織文化のなかで一番重要視されている考え方は「心理的安全性」と「ダイバーシティ」です。

心理的安全性というのは、どちらかというと「攻め」の考え方のことです。心理的安全性が高いほうが学習を継続でき、進化していく組織になれるといわれています。

そしてダイバーシティは、一般的には「さまざまな価値観の人がいるから受容しましょう」という「守り」に近い考え方のことです。しかし同時に「攻め」の要素も含んでいます。

この2つはすごく密接に関連しており、基本的にはかなり近い概念です。

VUCAの時代に対応していくには心理的安全性が不可欠

両手でハートを包んでいる様子

ーー「心理的安全性」とはどのような意味なのでしょうか?

心理的安全性についての研究を行ったエドモンドソン教授によると、言葉の定義は以下のとおりとされています。

「対人関係でリスクのある行動をとってもチームが安全である」という想いが、メンバーの中で共有された状態

心理的安全性が高い環境のほうが「生産性が高い」「ミスが少ない」「業績が良い」ということもいわれており、Googleが2012年に実施した社内調査「プロジェクト・アリストテレス」によると「生産性が高いチームは心理的安全性が高い」という結果も出ています。

つまりチームのパフォーマンスや生産性の向上を促すためには、心理的安全性を高めることが重要なのです。

ーーここ10年ほどで「心理的安全性」の注目度が上がっているようですが、その理由は何なのでしょうか?

心理的安全性が注目される背景として、時代の変化があります。近年は「VUCA(ブーカ)」という言葉もあるように、不確実性が高く将来の予測が困難な時代となっています。

【VUCAとは】
Volatility(変動性)・Uncertainty(不確実性)・Complexity(複雑性)・Ambiguity(曖昧性)の頭文字を取った言葉。社会環境・ビジネス環境の先行きが見えにくく、不確実な状態なこと。

テクノロジーの急激な進化や、新しいものが次々と誕生しているなかで、マーケットシェアや市場の構造が大きく変わってしまったり、会社の存在価値・提供サービスの価値がなくなったりといったことが、いつ起きてもおかしくない状況です。

ーーVUCAの時代において心理的安全性が重要である理由を教えてください。

心理的安全性が重要なのは、社会や市場、人などの変化に企業が適応していく必要があるためです。

昔は予見可能性の高い時代だったので、企業の上層部が事業計画を作り、そのほかの社員が計画通りに業務を遂行するだけで良いケースが、多く見受けられました。

たしかに外部環境があまり変わらない時代であれば、このようなトップダウンの手法でも、うまく機能するでしょう。

しかし最近は、1年という短い期間でも状況が大きく変わるので、従来のトップが計画し、社員がそれを遂行するやり方だけでは時代の変化に適応できず、企業が生き残るのは難しい状況になりつつあります。そのため変化に対応していくためにも、現場の情報を吸い上げないとなりません

ーートップダウンだけでなく、ボトムアップなどさまざまな方向のコミュニケーションを行うのがカギとなりそうですね。

そうですね。不確実性の高い時代に対応していくためには、ボトムアップされた情報の共有や横のつながりを意識したコミュニケーションなどが重要です。

その上で、現場の従業員たちがそれぞれ自分で考えて挑戦・失敗を繰り返し、より成果が期待できるものにリソースを投入することで、会社やサービスの価値を高めることができます。

しかし挑戦や失敗の繰り返しや、成果が確実でないものへのリソースの投入は、心理的安全が低い状態では実現が困難です。心理的安全性が低い状態とは、以下のような状態を指します。

・「発言したら批判されるのではないか」「ダメだと決めつけられてしまうのではないか」という不安を抱かせてしまう
・「もっといい案があるからそちらで対応して」というように、個人の意見を受け止めてくれない
・アイデア出しの会議を開催しても、誰も発言できない

たとえ現場の従業員が良いアイデアを持っていたとしても、一個人の意見は受け止められず、会社の運営層が言ったことだけを守る組織体制では、意見を発言しづらくなります。

現場の従業員が意見を言えない「心理的安全が低い状態」によって必要な情報を運営層が把握できない状況になれば、企業が社会や従業員に対して、時代に合った価値を提供することも難しくなります

ダイバーシティを考慮しないことは企業にとってのリスクに

人型のアイコンが並べられている様子

ーー「ダイバーシティ」とはどのような考え方を指すのでしょうか?

一般的にダイバーシティは日本語で「多様性」と訳されます。

ダイバーシティは企業にとってのリスク管理の観点で重要なだけではなく、新しい商品やサービスを生み出す力にもなるので、これからの時代を生き抜くためには欠かせない考え方です。

ーーダイバーシティの考え方を無視すると、どのようなリスクがあるのでしょうか?

ダイバーシティという言葉は、一般的に「マイノリティ(少数派)」の人たちのための言葉として用いられてきました。

最近まではマイノリティの人たちが「意見を言いたい・聞いて欲しい」と思いつつも、あまり聞き入れてもらえないケースも珍しくありませんでした。

しかし特定の人の意見を無視するということは、企業にとって大きなリスクになります。

たとえば「マイノリティの意見だから無視しても問題ない」という姿勢は、SNSでの炎上といった企業の信頼性を大きく損なう原因となる可能性があります。また「少数派の意見は聞き入れない」という組織文化は、心理的安全性の低下にもつながりかねません。

そのため社外のみならず社内の人々と関わる際には、組織として「個」を尊重できる文化が、非常に重要です。

顧客ニーズを捉えるために欠かせないダイバーシティ

ーー他にもダイバーシティが重要な理由はありますか?

ダイバーシティはリスク管理という観点だけではなく、「攻め」にも大切な要素です。

不確実性の高い「VUCAの時代」は、顧客や人々の価値観が多様化する時代でもあります。そのため近年では万人に受ける商品・サービスは減少傾向にあるように感じます。

多様な人々がいる現代の状況においてはダイバーシティの考え方がなければ、世の中のニーズに合わせた商品やサービスは提供できません

商品やサービスを展開する際は、ダイバーシティを意識することが、多様化する顧客ニーズに対応する上で重要です。

良好な組織文化を創り上げるためにはマインドフルネスが有効

芝生で瞑想している様子

ーー良好な組織文化を創り上げるためには、どのような取り組みをすれば良いのでしょうか?

組織文化において重要な「心理的安全性」や「ダイバーシティ」という考え方は、マインドフルネスの実践によって、磨くことができます。

ーー心理的安全性を高めるために、なぜマインドフルネスが有効なのでしょうか。

まず心理的安全性が企業文化として根付くためには、それぞれの人が「傾聴力」や「共感力」を磨く必要があります。

従業員が意見を口にする際に、周囲が感情的に言い返したり「間違っている」と決めつけたりすると、心理的安全性は当然低くなります。

従業員の話に深く耳を傾ける「傾聴力」と、従業員の状態を理解できる「共感力」を組織全体で身につけていれば、発せられた意見を尊重し、価値のあるものとして受け入れられるようになります。

マインドフルネスの継続は、傾聴力と共感力の向上に役立つことが、さまざまな研究で判明しています。つまりマインドフルネスの実践は、心理的安全性の高い職場環境の形成の、基礎となるのです。

参考:Julieta Galanteら (2023). A Framework for the Empirical Investigation of Mindfulness Meditative Development. Springer Nature Link, 14, (1054-1067).

参考:Gerald Matthewsら (2023).Tri-process model of interpersonal mindfulness: theoretical framework and study protocol. Journal of Personality and Social Psychology, 14, 

ダイバーシティとマインドフルネスの関係

ーーダイバーシティとマインドフルネスの関係について教えてください。

ダイバーシティの考え方を企業内で普及させるためには、以下のような姿勢やスタンスが重要です。

・自分とは違うものであっても、一旦受け止めて共感を持とうとする
・共感を持てなかったとしても、理解しようと傾聴する

企業内におけるダイバーシティの普及に関しても、個々における傾聴力や共感するスキルが求められます。これらの力はマインドフルネスを実践することで磨かれていくため、ダイバーシティを企業文化として育んでいく上でも、マインドフルネスが有効であるといえます。

マインドフルネスの継続でエンゲージメント向上と企業の成長促進が期待できる

人とデジタル

今回は、エンゲージメントを向上させるために欠かせない組織文化と、マインドフルネスの関係性について紹介しました。

心理的安全性やダイバーシティなどの考えは、従業員のエンゲージメントを高めることはもちろん、企業として今の時代に対応し成長するためにも重要です。

そして心理的安全性やダイバーシティを文化として根付かせるためのカギとなる傾聴力と共感力は、マインドフルネスの継続的な実践により磨かれていきます。


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