社員のエンゲージメントを高め、自己成長を促すためにマインドフルネスが効果的な理由
組織の生産性を高め、継続的な成長を促してくれるエンゲージメント。
どの組織においても高めたい要素ですが、従業員のモチベーションをどのようにアップさせるかお困りの経営者、人事担当者の方も多いのではないでしょうか。
今回は、MELON代表の橋本へのインタビューをもとに、従業員それぞれの自己成長を促しつつエンゲージメントを向上させる方法について、マインドフルネスの視点から解説します。
マインドフルネスとは何かについてはこちらの記事で詳しく解説しています。
エンゲージメントを高めるためには「自己の成長」が重要
ーーエンゲージメントを高めるために、なぜ「自己の成長」が必要なのですか?
まず、エンゲージメントというのは、「組織や会社のために能動的に頑張って働きたい」という意欲です。その前提のもと、「自分だったらどういう場所でエンゲージメントを高く保てるか」を考えてみるとわかりやすいでしょう。
例えばエンゲージメントが高まる環境には、次のようなさまざまな要素が不可欠です。
・ミッションやビジョン、企業理念に共感できる
・心身ともに健康に働ける
・フェアに評価してもらえる
・評価に見合った給料がもらえる
上記に当てはまる環境ではエンゲージメントが高まりやすいですが、もう一つ重要なのが、「自分がそこにいて頑張ることで成長できるか」「自己実現ができるか」といった視点です。
自己の成長が見込めない環境では「この会社のために頑張ろう」という意欲も低下してしまうので、エンゲージメントを高めるには自己の成長が欠かせないのです。
自己の成長を促すために欠かせない「自己認識」
ーーでは自己の成長を促すにはどうすればいいのでしょうか?
成長するためには、まず自分のことを知らなくてはなりません。つまり、意識の矢印を内側に向けて「本当に成長したいのか」という意欲を確認する必要があります。
ーー自分が持っている意識や考えを深掘りしていく、というイメージでしょうか?
そうです。これは「自己認識(セルフアウェアネス)」といって、自己理解を深めるために重要なことです。
自己認識の例としては、次のようなものがあります。
・自分はどういう性格なのか
・どんな能力・スキルを持っているのか
・自分の強み・弱みは何か
・得意なことや苦手なことは何か
さらに、成長に関していうと、「自分はどうありたいのか」「どこを目指しているのか」という点を認識することが重要となります。
自己認識の例として挙げた要素は、地図に例えると「目的地」と「現在地」に表すことができます。「自分はどこを目指しているのか」という目的地と、「自分はどんな能力を持っていて何が得意なのか」といった現在地がわかっていれば、目的地にたどり着くための道を描けますよね。
逆に、自己認識がないとどこにも行けません。そもそも「ここに行きたい」という目的地、いわゆる意欲がはっきりしていませんし、成長意欲があったとしても、客観的な自分の能力を評価できていないので、現在地もわからないからです。
自分の現在地がわからないと行きたい場所にたどり着けず、成長もできないという状況に陥ってしまいます。つまり、成長するには目的地と現在地を明らかにする必要があり、この2つを知るために自己認識が重要となるのです。
マインドフルネスは自己認識を高め成長を促す
ーーでは、マインドフルネスと自己の成長にはどのような関係があるのですか?
マインドフルネスの効果をわかりやすくいうと「心の解像度が上がる」ことです。
例えば、曇ったメガネをかけて周囲を見ても、ぼんやりとしてよく見えないですよね。自己認識も同じで、心を見るためのメガネが曇っていては自分の中身もわかりませんし、どこに行きたいかも見えません。
そんなとき、マインドフルネスを実践することで、心を見るメガネを磨きあげることができます。具体的には、自分の中にある感情や思考、意欲などを含む自己認識が、高解像度ではっきり見えるようになるというイメージです。
目的地はもちろん、自分の居場所もよく見えるようになるので、自己の成長のための地図もはっきり描けるようになります。
ーーマインドフルネスは、自己認識を高めるとともに成長を促すきっかけになるのですね。
そうですね、マインドフルネスを実践できている状態とそうでない状態を比較すると、実践できていない状態では成長を実現するための地図を描くのが難しくなります。なぜなら、マインドフルネスを実践できていないと自分のエゴやストレス、不安、バイアスなどのノイズによって、心のメガネが曇ってしまうからです。
その結果、「目的地がわからない」「どこに行けばいいかわからない」という状態に陥り、成長が停滞してしまいます。
マインドフルネスを実践して心のメガネを磨くことで、さまざまな汚れが落ちてクリアになり、成長しやすい状態を作ることができます。
ーーどれくらいの期間マインドフルネスを継続すれば、「心の解像度が上がった」「自己認識能力が高まった」という効果を実感できるのでしょうか?
研究によると、マインドフルネスは8週間継続すると効果を感じられるといわれており、効果を実感するときのパターンは2つあります。
1つ目は、心の中にあるネガティブなものがなくなっていくというパターンで、比較的感じられやすいものです。過度なストレスを感じていたりネガティブな感情があったりする状態だと、自己認識や成長を感じる余裕がなくなりますよね。
2つ目は、もう少し踏み込んで「自分はどうあるべきか」「心の底から自分は何をやりたいか」がはっきりするパターンです。すぐに実感する人もいれば、長く実践しないと実感できない人もいます。
人によって効果を得られるタイミングが異なるため、諦めずに続けることが大切です。
マインドフルネスを継続するメリットやコツはこちらの記事で詳しく解説しています。
成長のためには「意欲」だけではなく「機会」も必要
ーー自己の成長を実現するには、ひたすら自己認識や成長意欲を高めるだけでいいのでしょうか?
組織の中で「個の成長」に取り組む場合、主体となるのはもちろん当事者となる従業員自身です。ただ、成長を促すには「誰かの成長のために周りは何をできるか」という視点も必要です。
多くのマネージャーや上司の方は「部下に成長してもらいたい」と思いつつも、「どうやって成長させてあげればいいかわからない」という問題を抱えているのではないでしょうか。
部下が成長するためには「意欲」と「機会」の両方が必要です。意欲は自分で発見するものですが、機会は周りが作ってあげなくてはならず、機会やきっかけを与えるのは上司の役割です。そのため、個の成長を促すには、その人自身の努力はもちろん、上司が働きかけて成長を後押しする必要があります。
マインドフルネスはコーチング能力も向上させる
ーーマインドフルネスでリーダーシップ能力が向上するというのは本当ですか?
マインドフルネスで向上するのは、コーチング能力のほうがより近いでしょう。
部下の成長を促すには、「あなたはどうなりたいんですか」といった対話やフィードバックが必要です。しかしよくある失敗パターンとして、相手の意見を聞く前に「あなたはこうしなさい」と決めつけ、押しつけてしまうケースがあります。
「相手がどうしたいのか」という相手主体で考えるのではなく、自分主体になっている対話はうまくいかない傾向にあります。なぜなら、成長したい意欲がある部下は、「自分はこうなりたい」という意識を持っているからです。部下が発言したとたんに「それは違う」とさえぎってしまうと、信頼関係を築けませんし正しいアドバイスもできません。
成長を後押しするには「部下が自分の力で目標を達成することをどうやってアシストできるか」というスタンスでなければなりません。つまり「自分が」ではなく「相手が」何をしたいのか、どこを目指しているのかを聞いてあげる、すなわち傾聴・共感する力が必要になります。そのためには、マインドフルな心の状態が不可欠です。
上司がマインドフルに聴く力や共感する力を持ち、心から応援するスタンスになれば、部下と上司の信頼が深まり、成長しやすい環境が整いますし、会社の成長にもつながります。
そして、相手を思いやる気持ちを育むマインドフルネスは、コーチングのベースとなる傾聴力・共感力を向上させます。これにより、部下と良い信頼関係を築けるようになり、結果としてリーダーシップ能力の向上も期待できるのです。
まとめ|マインドフルネスでエンゲージメントと成長意欲を向上
今回は、マインドフルネスがエンゲージメントと自己の成長を促し、相乗効果を生み出す背景を解説しました。
自己の成長やエンゲージメントの向上には、自己認識能力やコーチング能力(傾聴力・共感力)が必要ですが、これらの能力はマインドフルネスの継続的な実践により向上させることができます。
エンゲージメントに課題を感じている場合は、マインドフルネスの導入を検討されてみてはいかがでしょうか。
企業がマインドフルネスを取り入れるメリットはエンゲージメントの向上に限りません。こちらの記事では大手企業が導入する理由や導入事例を紹介しています。
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